Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

日欧ICT戦略ワークショップ(後編)

 次のテーマはICTの目玉政策、欧州側からは「Digital Single Market」の説明があった。欧州(EU)は関税などは撤廃して統一市場になっているのだが、各国のデジタルデータは統一されておらず、書き換えや変換が必要である。例えばアイルランドからポーランドへ荷物を送る時、積み替えなど事業者が替わるタイミングで4回ほどデータも書き換える必要があったと聞いた。

 

 これを是正するのが「Digital Single Market政策」で、各国のデータ体系やID、フォーマットなどを統一してサービス含めた統一市場にしようというもの。5年前に聞いて、これはイケルと思った。当然その過程で苦労はするだろうし、思わぬ問題が降ってくることもあろう。それを勉強させてもらって、TPPエリアやRCEPエリアで実現できればアジアの成長に大きく寄与する。

 

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 ただ今回も具体的な効果、企業側から見ての経済的効果はまだのようだ。ブリュッセルの人に聞くと、各国間のローミング(電話の中継・転送)は便利で安価になったらしい。日本側からは「5年前から注目していた。次回でもいいので欧州企業としてどう良くなったか、儲かるようになったか教えてほしい」との質問が出た。これには欧州でも事業をしている日本企業が「欧州委員会に協力させてもらっているが、社会実装はこれから」と答えていた。

 

 その後、サイバーセキュリティや5Gのような新技術の議論があって、最後に「データ活用」が取り上げられた。日本側は個人情報保護委員会が、現在検討中の保護法改正に向けた大綱骨子を示していた。産業界も、経団連が公表した「個人データ活用事例」17件の英訳版を配布していた。こういう具体的な事例を政府側に示し、国際的なデータ流通ルールを議論する「大阪トラック」を促進したいということだった。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/11/11/140000

 

 欧州と言えば、GDPRに代表されるように個人情報が金科玉条のような地域である。しかし欧州政府側の議長は最後に、「これまで我々は個人情報保護に軸足を置き過ぎていた。これからはデータ活用促進の議論へとスタンスを移さないといけない」と述べた。リップサービスとしてもありがたい話、巨大IT企業のいない日欧政府がICT戦略で連携を強めるのは、産業界としてもうれしいことです。