環太平洋パートナーシップ協定(TPP/CPTPP)は、2000年頃からシンガポール・チリ・ニュージーランド・ブルネイ4ヵ国のEPAとして議論が始まり、EPAは2006年には発効している。その後、もっと大きな連携協定にしようとの議論になった。
折からリーマンショックが世界経済を襲い、より経済成長を目指すためにと多くの国が参集してきた。2016年までに、カナダ・日本・マレーシア・ペルー・ベトナム・オーストラリアが入ったものになった。ただ米国トランプ政権は離脱して、残った11ヵ国での成立となった。
2011年ころから、日米両国のデジタル産業界は、サイバー空間での国際的なルール整備を協力して進めていた。その基本的なものが、何度かご紹介している、
1)国境を越えるデータ流通の確保
2)国内にサーバーを置くことを強制する行為の禁止
3)ソースコードの開示を強制する行為の禁止
の3原則である。日米産業界&政府は、TPPの中にこの考えを入れるよう努め、第14章「電子商取引」の中に、3原則を明記できた。これが、デジタル政策屋として僕が最初に「国際条約」に関与できたことである。
僕らとしては、デジタル政策は「電子商取引」に閉じ込められたくなかったし、金融部門や一部公共部門を除くという条件がも気に入らない。しかし、まずは第一歩が必要だった。
CPTPPは、現在8ヵ国が国内手続きを終えて発効している。残る3ヵ国(ブルネイ・マレーシア・チリ)も国内手続き中である。その連携協定が、昨年英国が参加意向を見せてから、急に注目を(より)集めるようになった。英国としては、アジア重視の姿勢だし、「Brexit」の埋め合わせをしようとしているともいえる。
さらに先月、中国と台湾が参加申請をするに至り、議長国である日本に大きなタスクが与えられることになった。今日、霞ヶ関の人と話していて「英国・台湾はいいが、中国はデジタル要件もあって無理だよね」と言うと、困った顔をしていた。
さらに最近ワシントンDCから戻ったばかりの人もいたので、
「米国が早く戻ってきて欲しいよ。中国に先越されちゃうよと言っておいて」
と言うと、真面目な顔になり、
「自由貿易の人達も難しい立場、反対勢力も多く分断気味。政治決断がいるけど、議論のきっかけが掴めていない」
とのことだった。これも米中対立(競争)の、一つの場になりそうですね。