後者の指摘する問題点、
・日本の兵器産業に未来がない。
・システムとしての兵器調達になっていない。
というのは、ありうることだと思う代表的な銃器メーカー豊和工業の工場は、僕が大学に通う私鉄の脇にあった。愛知県は長崎県や広島県と並んで、旧軍の兵器産業が盛んだったエリアでもある。ただグローバル化が進んでいる今では、すべて国産というわけにはいかない。現に陸自も20式小銃と同時に更新する拳銃については、ヘッケラー&コッホ社の「SFP9」を採用している。
以前国内サイバーセキュリティ産業の活性化を図ろうと霞ヶ関が開いた会議では、日本を代表する製造業とエネルギー企業が、「セキュリティソリューションは、グローバルで標準のものでなければ意味がない」と冒頭に発言して、事実上会合を閉じてしまった。そこまではいかなくても、火器の世界でも同じことが言える。
むしろ問題は「システムとしての調達でない」という指摘にあると思う。前編で述べたように、小銃・拳銃は一つの要素でしかない。サブマンシンガンやショットガン、狙撃銃、機関銃に加え、クレイモアなどの地雷、迫撃砲、砲兵支援や航空支援、洋上や海中からのミサイルまでも考えて「防衛」にあたるべきだ。
そういう意味で、「20式小銃」にグレネードランチャーが着けられるのはとてもいいこと。これまでは、ライフルグレネード(擲弾を銃口につけ、空砲のガス圧で飛ばす)だったというから驚いた。これは今まで64式にしても89式にしても、実際脅威となっている敵兵に向かって発砲したことがないのが根本原因。使われなかったことは平和な日本だったわけで、それ自体はいいのだが、システムの向上には阻害要因だ。
ひょっとすると「どうせ発砲しない銃だ」という発想で開発・生産・調達を決めたのなら、これは罪が深い。兵器は必要悪、硝煙や爆風の中でしか真価を発揮できないし、成長もしない。特に兵器の組み合わせ、つまりシステム化は実戦を想定してやってみるのだが、「最初の銃声の後まで続く作戦はない」という言葉のように、実戦では思わぬことが起きる。
実戦をしてはいけない軍隊である自衛隊だから仕方ないのだが、やはり兵器は戦場で鍛えられる。せめて輸出ができるようになればと(モノづくりの立場からは)思うのですが、難しいでしょうかね?