Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

米国の5Gセキュリティ国家戦略(後編)

 公表された「国家戦略」は、名指しこそしていないものの明らかに中国政府やHuawei/ZTEのような中国企業を意識している。さらに具体的に、米国政府としてどうするのかを、僕なりの推測を交えてコメントしたい。

 

 まずこの「戦略」は、次世代の通信規格5Gが、従来のものに比べて

 

・圧倒的に高速・大容量通信が可能

・きわめて多くのデバイス(例:IoT機器)を同時接続可能

・事実上ゼロに近い遅延しか必要としない

 

 ことを挙げている。安全保障面でも経済活動についても、この規格を使わないという選択肢は先進国の将来ビジョンにはないのだ。しかし「悪意のあるものがすでに5G技術を利用しようとしている」(トランプ大統領)のが現状で、5Gの利用が拡大すればするだけ「悪意のあるもの 」がターゲットにする対象が増えることになる。

 

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 そこで前編で述べたように、利用促進はするがちゃんとリスクを評価し、コアセキュリティを確立し、(悪意あるものを含めた)世界中の開発普及動向を見て、信用できるネットワーク構築をする・・・というわけだ。具体的には、

 

・5Gインフラ中のリスクの高いベンダーに対処

・サイバーセキュリティのベストプラクティスを確立

  (研究開発から運用管理までを含む)

・これを実現して米国の5Gインフラに適用

・国際機関と連携しこれを友好国に広める

・これらの活動は、日々Updateを続ける

 

 ことをするようだ。実行にあたっては米国だけでは十分でないと(暗に)言っていて、「最も近いパートナー、同盟国と手を組む」とも書いてある。ただこの「国家戦略」レポートではまだ不十分で、より詳細なものを詰めているとのこと。その方向性を予測すると、

 

・より多様で安全なベンダーを奨励する

・ベンダー発掘(支援も?)には思い切った手段が必要

・恐らく仮想化とOpen Interfaceが使われるだろう

 

 となる。仮想化と言えば、先日紹介したMicrosoftの「ネットワークのクラウド化構想」が思いつくし、Huaweiらに対抗するには多様なベンダーでありながらそれらの間の密接な連携が必要なので、Open Interfaceは必然だ。

 

 しばらく前に中国政府は5G関連開発で、1兆円(諸説あり)以上の支援を企業に行ったという。遅ればせながら米国政府も「安全なベンダー」への支援をするようだ。さて、日本政府はどうなさるのでしょうか?