Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ジョン・ブルのこだわり

 第二次大戦初期、帆布張り・複葉の雷撃機ソードフィッシュ、複座(2人乗り)の艦上戦闘機フェアリー・フルマーなど、異色の航空機を多く使っていたイギリス軍だが、陸上でもこだわりのAFVを使い続けていた。ドイツ軍やソ連軍にはない戦車の区分を、イギリス軍は持っていてそれを頑固に守り開発・配備していた。その区分とは、巡航戦車と歩兵戦車である。
 
 第一次大戦の戦訓として、機関銃座や塹壕を戦車で突破しても、戦車の速度が遅すぎて戦果(占領できる土地)を十分広げられないということがあった。かといって、戦車の速度を上げようとすると、より大きなエンジンを積むなりして大きさや重量が増してしまう。
 
 そこで、突破用の戦車と(突破口が空いてから)戦果を拡大する戦車を、分けようという発想が出てきた。簡単に言えば前者が歩兵戦車、後者が巡航戦車である。その実例として、第二次大戦初期のイギリス軍戦車のスペックを見ていこう。右から順に、

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◆バレンタインⅡ 歩兵戦車
 兵装:主砲長砲身40mm砲、同軸機関銃(火力4)
 装甲は(大戦初期のAFVとしては)厚い(正面6・側面他6)
 移動速度:10ヘクス/ターン
 
 速度は遅いが装甲は厚く、歩兵の盾となって敵陣に迫るのが役割。しかし面白いことに、この40mm主砲は榴弾・榴散弾を撃てないのだ。撃てるのは対戦車用の徹甲弾だけ。ゲーム上では口径を示す「40」に下線があることで表示されている。
 
◆マチルダⅡ 歩兵戦車
 兵装:主砲長砲身40mm砲(発射頻度2)、同軸機関銃(火力4)
 装甲は極めて厚い(正面11・側面他8)
 移動速度:9ヘクス/ターン
 
 装甲はバレンタインより厚くなって、実質的にT-34並みになっている。それでも主砲は徹甲弾だけしか撃てないのは同じ。まあ、発射頻度(□付き数値)が上がったことはいいのだが、徹甲弾ではソフトターゲットに影響をあたえることはできない。
 
◆クルセイダーⅢ 巡航戦車
 兵装;主砲長砲身57mm砲、同軸機関銃(火力4)
 装甲は薄い(正面4・側面他3)
 移動速度:15ヘクス/ターン
 
 装甲は薄く、速力は早い。突破口が空いたあと、高速の戦力を敵の防衛線の背後に展開させるのが主任務。57mm砲はドイツの主力戦車にも有効だったが、実際にそういうシーンは多くなかった。フランス戦線に続いて北アフリカでも戦った主力戦車ではあるが、やはり根本的な設計思想に齟齬があると思う。
 
◆クルセイダーⅠCS 巡航戦車
 兵装:短砲身76mm砲、車体機関銃(火力2)、同軸機関銃(火力4)
 装甲は薄い(正面4・側面他3)
 移動速度:15ヘクス/ターン
 
 上記の榴弾砲バージョンと思っていいい。徹甲弾は撃てず、榴弾・榴散弾しか撃てない。ゲーム上では「76」の上線があるのがその表示。
 
 どう考えてもわからないのが、歩兵戦車なら榴弾、巡航戦車なら徹甲弾を撃てるのが普通ではないだろうか。それがゴチャゴチャになっているイギリス軍のAFV、というより陸戦ドクトリンだろう。結果としては、これらのAFVは役に立たず米軍からの供与品も使うようになってゆく。そういう柔軟性があるのがイギリスのいいところだとは思うけれど。