Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

地震・雷・火事・親父

 これは、日本古来からのリスクマネジメントに関する格言である。地震は確かに怖いし、火事による犠牲者も多い。それに比べて雷というのは、直接的に人的被害をもたらすことは少ない。そして最後の「親父」、この権威の凋落はひどく、どちらかというとコミカルな標語に使われそうなくらいだ。

 
 30年くらい前、ある地下鉄駅の終点近くに一人で住んでいたころ、休日の昼食に時々出かける中華食堂があった。店名を、「かみなりや」という。駅から徒歩2分という好立地の割には、お値段が安く、味も量も満足できる店だった。しかし一つだけ課題があって、ちょっと心臓の弱い人にはお勧めできない。
 
 畳敷きの小上がりが2テーブル、4人掛けのイス席が3つ、あとはカウンター数席で、カウンターの奥が厨房になっている。厨房では、大柄でゴマ塩頭の親父が、数人の若い衆を使って料理をさせている。その厨房で、時々とどろき渡るのが、当店名物のカミナリ。親父が、若い衆のこまかな所作にも目を光らせていて、
 
 「なんだ、その手つきは!」 「ちゃんと、返事しろ、聞こえんぞ!」 「何度言ったらわかるんだ!」
 
 という具合。

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 ここでだけは、「地震・雷・火事・親父」の意味が分かるような気がしたものだ。僕も最初は驚いたが、そのうちに気にならなくなって、焼きそばや、チャーハン、ラーメンなどをよく食べに行ったものだ。特に、お腹が空いている時の、チャーハンとラーメンのセット(800円くらいだった)は嬉しかった。
 
 その土地を離れて久しく、数年前にたまたま通りかかったら、店ごと無くなっていました。「親父の時代の終焉」のような気がして、ちょっと寂しかったです。