Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

カジキのお刺身

 田舎の少年だった僕の家では、日常は質素なものを食べていた。しかし年に何回かは親戚や近所の人が集まる会食の日がある。親父の会社の仲間たちが集うこともあった。そういう時は、狭い家ながら8畳の座敷と6畳の次の間を通した即席の宴会場ができるようになっていた。

 
 後年法要の折などには「仕出し弁当」をとることもあったが、それ以外は台所で作った料理をどんどん並べることになる。釣った魚を持ち込む来客もいて、親父が生きたコイやフナ、ナマズをさばいているのも見たことがある。鳥を1羽まるごと買ってきて鍋の具にすることもあった。まあ、酒さえ呑めればそれでいい来客が多かったような気もする。
 
 そうでない日常、親父が勤務先から帰ってくると「晩酌」をするのが当家の日課。そこで母親と祖母がその夜の「メインディッシュ」を何かしら用意している。夏場は鳥のササミの霜降りなどがごちそうだった。そんな中、お刺身でよく出てきたのが「カジキマグロ」。恐らく値段も含めて手に入りやすかったのだろうが、当家の看板メニューだった。

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 白身で淡いピンク色、味は淡泊である。子供の僕は、2きれくらいをご飯のお供として大事に食べていたように思う。大学生になって親父の晩酌に時々付き合うようになると、カツオのたたきやマグロの刺身がメニューに加わってきてカジキの登場は減っていった。田舎にもスーパーマーケットが進出し、それまでの鮮魚専門店に頼っていた「補給線」が多様になってきたのだろう。
 
 さて会社員になって田舎を離れると、さっぱりカジキのお刺身には出会えなくなった。一度下町の寿司屋で「カジキはないの」と聞いて呆れられたことがある。その後懇意になった郊外の店のマスター(いなせな包丁人だった)に聞いたところ、「まあ東京にはないね。下魚と思う料理人が多いよ」と教えてくれた。それ以降すっかり「カジキのお刺身」は諦めていた。
 
 近年沖縄に旅行に行くようになって、見つけたこともあるのだが、沖縄そのものが遠くなってしまい再び諦め・・・。ところが今回地元のスーパーに出かけたら、ほんの2~3パックだったけれど見つけることができた。ちょっとスジっぽかったけれど懐かしい味。これも40年ぶりですかね。