Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

インド太平洋・・・アフリカへの道

 先月末、第七回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催された。アフリカ諸国への開発援助を促進するための旗頭のような会議で、3年に一度開催されるようだ。通常は日本で開催され、今回は横浜が会場になっている。ただ3年前の2016年は初の現地アフリカでの開催だった。その時安倍総理は、新しいキーワード「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を使った。確かにアフリカ諸国と日本が交流するためには、南シナ海からインド洋のルートが安全に確保されなくてはならない。しかし現実には南シナ海など、中国が軍事拠点化を進めていて「一帯一路」の重要ルートとしているではないか。

 だから当初僕は、構想はいいけれど「蟷螂の斧」だよねと思っていた。しかし昨年になって米国のポンペオ国務長官がインド太平洋ビジネスフォーラムで、「自由で開かれたインド太平洋のために、1億ドルあまりを支出する」と言い出してリアルな話題になってきた。米国の言うFOIP協力とは、デジタル経済・エネルギー・インフラ の3重点分野で、この広いエリアを発展させていこうというもの。日本単独でなく日米協力でなら、この大風呂敷は検討の余地がある。

 

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 ・成長著しいアジアと潜在力溢れるアフリカという2つの大陸
 ・自由で開かれた「太平洋」と「インド洋」という2つの大洋

 のダイナミズムを一体として捉えることで「新たな日本外交の地平を切り開く」と霞ヶ関の人に見せられた資料にある。FOIP協力の最初の項目に「デジタル経済」が入っていた関係で、本件の説明会の末席に僕も呼んでもらえたのだ。日米両国は、インド太平洋を国際公共財と位置づけていて、ここにある脅威(海賊・テロ・大量破壊兵器拡散・自然災害・現状変更)を排除すると言っている。この脅威の羅列を見ると、国際紛争のかなりの部分が含まれているのがわかる。大量破壊兵器については北朝鮮やイランを核開発、現状変更については中国の海洋進出のことだろう。・・・そう中国なのだ。中国の国家戦略「一帯一路」に対してFOIPは、「中国の独占や優先を許さない」と言っているのだ。

 もちろん現状では、アフリカ諸国に中国が落としている巨大マネーや人的投資に比するものを日米両国が出来るわけではない。ただアフリカ諸国でも「高利貸し」的な中国の借款には批判的な声も高まりつつある。米中対立が鮮明になってきている現状では、「一帯一路」対FOIPの闘いも激しくなってきそうです。