Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

電脳要塞都市、Be'er Sheba

 イスラエル中部の古い街「Be'er Sheba」は、サイバーセキュリティの拠点に変貌しているという。先に訪問した人たちからは「砂漠の中の電脳都市」と聞いていたが、周囲は砂漠というほどではない。多少の緑はある丘陵地帯で背の高い木はなく、灌木がまばらに生えているくらいだ。

      f:id:nicky-akira:20190421054128p:plain

 
 イスラエルは南北に細長い国で、北から港町ハイファ、地中海沿岸の街テルアビブ、パレスチナに張り出したような「首都」エルサレム、南部紅海の港町オイラートまで、フリーウェイは充実している。
 
 テルアビブから「Be'er Sheba」まではフリーウェイで2時間近くかかる。テルアビブを出てしばらくは平地が続くのだが、都市周辺を外れると人家はほとんどない。上下水道や電力網などのインフラ整備を広げていないのか、適切なコンパクトシティのようにも見える。
 
 その後なだらかな丘陵地帯を縫うようにフリーウェイが蛇行し始める。周辺はブドウやオリーブの畑が広がり、相変わらず人家はない。「Be'er Sheba」が近づくと、畑も見られなくなり徐々に坂が急になってくる。ひとつの丘を越えると、眼下にさほど高層ではないが近代的なビル群が広がっていた。
 

    f:id:nicky-akira:20190421054235j:plain

 このエリアには、サイバーセキュリティの研究機関、オペレーション機関、人材育成機関やスタートアップを含めた民間企業も多数入っており、なお増殖中だという。イスラエルのサイバーセキュリティ能力については、軍の存在を抜きには語れない。国民皆兵であり女性兵士も当たり前の国だが、若いころから選抜されたハッカー能力の高い少年少女が軍で実戦経験を積み、技術を磨く。
 
 彼/彼女らは実際の戦闘に出るわけではないが、10歳そこそこの「軍人」もいるようだ。その結果、イスラエルでは人口の割には多くのサイバーセキュリティ人材を持つことができ、彼/彼女らが退役後起業したり関係機関にリクルートされたり、研究・教育機関に移ったりする。その起業支援の組織もあって、国を挙げた「サイバセキュリティ国家政策」が進められている。
 
 何箇所か廻り、サイバーセキュリティはまさに戦争だと感じた。憲法9条を始めとする諸般の縛りはあるのだが、日本もこの国に学ぶことは多いと思う。