Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「Brexit騒動」の源流

 経団連会館APEC関連の報告会があったので、参加してきた。5年前なら何のかかわりもない会合だが、このところデジタル関連の話題が方々の国際会議で取り上げられるようになっている。今年のAPEC(議長国:チリ)も4つのテーマのうち最初のものが「デジタル経済」だった。

 

 ちょうど日本でもG20の真っ最中、財政・貿易・環境等々どれをとってもデジタルと無縁ではいられない大臣会合になっている。外務省と経産省の担当官がAPECでの議論を説明したのだが、「デジタルは今年の流行で・・・」とか「この数年貿易環境は変化していません」とか言う。流行などではない毎年比重が大きくなるテーマだし、デジタル貿易が大きくなってきたからこそ「デジタル課税」の議論が出てきていることを彼らは認識できていないようだ。

 

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 そんなわけでちょっと不機嫌だったのだが、ゲストの大学教授が「Brexit論」をしてくれたのは大変参考になった。この先生は英国外交史が専門で、特に国民投票に至る道を再整理して説明してくれたのが良かった。要約すると源流は以下の通り。

 

 離脱論者は保守党にも労働党にもいる。最初は少数だったが、与野党拮抗の状況になると、与党内で少数意見の離脱論者にも配慮せざるを得なくなる。サッチャーもメージャーもキャメロンも野党の攻撃ではなく、与党内をまとめられずに辞任した。その原因が「少数の離脱派」。キャメロンは離脱派をつなぎとめるために国民投票(の愚)に討って出るが、どうせ残留の結果が出るから問題ないと思っていた。

 

 離脱強硬派で知られるジョンソン(当時)外相も、離脱が決まってしばし茫然としていたらしい。写真は、地図上に青が残留優勢の地域、赤が離脱優勢の地域を色分けしたもの。アイルランドスコットランドはほとんど青だ。イングランドに赤が目立つ。今後も、強硬離脱か、合意を目指すか、再び国民投票かなどの迷走が続くが、下手をするとアイルランドスコットランドなどの分離独立すらありそうだ。

 

 先生によると最大の問題は、国際政治の経験深い官僚などが国内のゴタゴタでやるべきことができないこと。イギリスだけでなく、世界の外交に大きなマイナスになるだろうと言う。米中対立にしても、米国が英国のインテリジェンスを使えず苦戦するかもとのコメントだった。もはや、何をかいわんやですね。