Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

IT戦略という指針(5/終)

 IT戦略にとって、民主党政権の3年余は冬の時代だったと言えよう。戦後理系学科出身の首相は2人しか知らないが、その2人(鳩山首相:工学部計数工学科、Ph.D.菅首相:理学部応用物理学科、弁理士)が揃ってIT政策に興味を示さなかった。3人目の野田首相が意欲を示したというが、特段興味をひく何かがあったわけではない。
 
 自民党が政権を回復し「三本の矢」を放つようになると、IT政策は3本目の成長戦略の重要項目として再び注目され始めた。その名前を「世界最先端IT国家創造宣言」という。やや大仰なネーミングだが、現在に至るもこの宣言が毎年改定されながら続いている。

 ・革新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成長を促進する社会の実現
 ・健康で安心して快適に生活できる、世界一安全で災害に強い社会
 ・公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会の実現

 いろいろな意見が飛び交いその言葉をツギハギしたのだろうか、あまり美しくない文章ではある。それでも言わんとするところは、麻生政権の「i-Japan戦略2015」と大きな差異はないように思う。3年余の空白は残念なことではあるが、ある意味やむをえなかったことだろうし、僕を含めてIT業界にいるものにとって「アタマを冷やす」適切な期間だったのかもしれない。

 総合という文字が付いて「IT総合戦略本部」になり、総理や官房長官を本部長とする会議が一段と増えて埋没しかかっているかもしれない。しかし森内閣に始まる「IT戦略本部」は、ある程度日本政府のIT政策の舵取りをしてきたし、いくつかの成果も挙げてきた。

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 戦略そのものも、医療・農業・防災・交通・人材育成など多くの分野にわたる課題と対応が記載されるようになり、総務省経産省がいがみあっている(!)だけのものではなくなってきた。国交省文科省厚労省農水省なども積極的にIT政策を考え始めている。
 
 しかし、IT業界はマウス・イヤーである。年度予算を半年かかって策定し、1年かけて執行するようなことで追随できるかどうかは不透明だ。やはり、戦略にもっと民間が関わり機動的に進退を決められるような運用が必要ではなかろうか。IT政策の策定から実行の主役は民間であるべきなのだ。まあ、予算策定に年間の半分を費やすような民間も無いではないが。