Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

コメディアン大統領を生んだもの

 ウクライナの大統領戦が終わった。出口調査の段階ですでに決定的だったのだが、新人でコメディアンのゼレンスキー氏が当選確実となっている。現職のポロシェンコ氏はウクライナ有数の富豪で「チョコレート王」とのあだ名もある。対露強硬派として知られ、紛争続くロシアに「全面戦争も辞さず」との姿勢を見せていた。

 

 プーチン大統領が支持者の喝采を浴びたクリミア併合の例をはじめ、両国間には緊張と言う言葉を超えた敵対関係がある。僕の専門分野でも、2度にわたる広域ブラックアウトはロシアのサイバー部隊の仕業だというのはほぼ確かな情報だ。

 ロシアから見れば、ソ連崩壊時のどさくさに各国が独立しロシア人住民の多いクリミアやウクライナ東部などがもぎとられてしまったという思いがある。またロシア艦隊の無視できない一部はクリミア半島に根拠地を置き、黒海には他に適当な軍港はない。クリミア奪還は悲願だったし、そのためにウクライナと激突してもやむを得ないとプーチン大統領は判断したのだろう。

 一方クリミアを取られた上に東部のロシア人が多く住む地区では分離の動きが出てきているウクライナでは、ロシアと宥和することなどありえないとするポロシェンコ氏の主張は受け入れられて、彼は2014年から大統領のイスを守ってきた。それが今回、明確にロシア寄りとまでは言わないが宥和の可能性を考えるゼレンスキー氏に敗れたのは、ウクライナ国民が対露紛争に倦んできたことを示すのではないか。そもそもエネルギーの多く(天然ガス等)をロシアに頼っているのもウクライナの実情である。領土問題もあるのだが、経済的不利益を打開しようという言葉には説得力があったのだろう。

 似たような話になるかもしれないのが、2020年に予定されている台湾の総統選挙。ホンハイの郭会長が出馬の意向を示し、現時点の調査では現職の蔡氏を上回る支持を得ている。蔡氏も対中強硬派であり、ある意味台湾海峡の緊張を高める役割を果たしている。

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 中国の「一帯一路」の起点ともあるべき島だけに、習政権は「一国二制度」の提案などして協力関係に持ち込もうとしているが、彼女は受け付けない。そこにビジネスマンである郭会長の登場、彼は対中宥和を考えているはずだ。ロシアと中国、どちらも困った国ではあるが、緊張関係にある国・地域としては対立か宥和か、難しい選択を迫られているということでしょう。