Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

線路の幅という障害

 先月のG7交通大臣会合で、ウクライナ復興を各国が支援することの一環として、鉄道の線路の幅をロシア仕様から欧州仕様に替えて轢きなおすことが決まった。これは地味な話だが、ウクライナを「西側」に引き入れる意味で、NATO入りほどではないが大きなインパクトをロシアに与えることになる。

 

 19世紀、鉄道というのは最先端インフラだった。先進国家イギリスでは、ロンドンから放射状に伸びる鉄道網が自慢だったし、大陸国家(フランス・ドイツ)もそれに倣って鉄道網の整備を進めた。その折、いろいろな規格が採用されて、線路の幅もいくつかの種類ができてしまった。

 

 欧州に倣って鉄道整備を進めるにあたり、日本政府はどの規格を採用するか迷い、結局よりコストの安い狭軌を選んだ。後年新幹線を整備するにあたって線路幅を広げたが、これが欧州の標準軌。したがって、新幹線と在来線では何らかの工夫をしないと、相互乗り入れできない。

 

    

 

 コストの関係で線路幅を決めた国もあれば、別の理由で隣国と線路幅を変えた国もある。例えばスペイン、わざとフランスと線路幅を合わせなかった。理由を聞くと、

 

「ナポレオンには苦しめられた。ナポレオンが鉄道でやってくるのは困る」

 

 とのこと。フランスからの侵略に備え、わざと国境を通りにくくしよう(*1)というのだ。1941年、ソ連に攻め込んだドイツ軍も、欧州内の軌道とソ連の軌道が異なるので、伸びる兵站線の維持に苦労をした。陸上に国境を持たない日本人には気付かない「インフラの互換性」である。

 

 ウクライナソ連の一部だったことから、インフラ仕様はロシアと同じ。それもずいぶん破壊されたので、いっそ全部線路を轢きなおせば、西側諸国からの輸送は楽になり、ロシアからの輸送は手間がかかるようになるわけ。戦時だけではなく、平時でも西側からの流通コストとロシアからの流通コストに変化が出る。目立たない報道でしたが、また一歩ウクライナをロシアから引き離すことになるようで・・・。

 

*1:兵站などの輸送にあたり積み替え、台車交換が必要になる。