Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

通信の秘密を巡る難問

 インテリジェンス業界では、通信傍受によって得られる情報活動を"SIGINT"と呼ぶ。その重要性は多くの歴史・軍事史で明確になっていて、昨年末の防衛3文書改訂でもSIGINTの活用を促す記述が散見される。

 

 例えば、国家安全保障戦略に「通信事業者が役務提供する通信に係る情報を活用(中略)疑われるサーバ等を検知」とある。これらの情報を活用することで、脅威や重大な攻撃のおそれに対処するということだろう。このこと自体は歴史を見れば当たり前なのだが、今の日本では難問を抱えることになると、旧郵政省出身者が教えてくれた。それは、憲法に通信の秘密条項があるから。

 

憲法21条2項 検閲はこれをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはならない。

 

        

 

 通信と一口に言ってもさまざまなものがあるが、

 

有線電気通信法9条 有線電気通信の秘密は、これを侵してはならない。

電波法59条 無線通信を傍受してその存在や内容を漏らし、またはこれを窃用してはならない。

電気通信事業法3条 電気通信事業者の取扱中に係る通信は、検閲してはならない。

 同4条 事業従事者は、知り得た他人の秘密を守らなくてはならない。

 

 と、考えられる全てをカバーするように法整備が成されている。彼は、憲法21条は米国の理想主義者が米国では導入できない規定を入れ込んだものだとしながら、平和憲法の中では重要な条項だと評価する。一方「闘える国」に向けての岸田内閣の行動は、当然の部分があるとも言う。

 

 重大なサイバー攻撃の「おそれ」を検知することは、被害の未然防止や軽減に資することは間違いはない。ただどういうケースなら上記の法規をくぐって、検閲や傍受情報を活用できるのか?総務省の彼の後輩たちは、従来の法解釈と新しい官邸の方針の板挟みとなって苦悩することになる。

 

 この難問解決にあたっては「官邸vs.官僚」という矮小化した枠組みで捉えず、市民にも開かれたOpenな議論が成されることを期待していますよ。