Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

デジタル課税はどうなるの

 G7財務大臣会合が終わり、争点となっていた法人税の最低税率は15%ということで決着したらしい。各国は「COVID-19」対策で財政出動をしており、大幅な財政赤字を抱えつつある。その穴埋めは、米国バイデン政権に代表されるように、

 

・富裕層のストック増税

・大企業法人税増税

 

 によることが真っ先に挙げられるだろう。そうなると欧州各国が狙いを定めるのは「プラットフォーマー」と呼ばれるデジタル企業、彼らに対しては2通りの攻め方を考えていた。

 

1)拠点を最低税率の低い国に置いていること

2)消費者のいる国に税金を落とさないこと

 

 を是正しようというわけ。今回の合意で、最初の項目はなんとかなりそうだ。もちろん「G7で決めたから」ですべての国が従うわけではないが、是正勧告はできるだろう。さて問題は二項目目。EUは相互に関税などかけないわけだから、A国にサーバーや事業所を置いてB国にサービスして売り上げを挙げても、B国には税収は全く入らない。

 

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 これをなんとかしようと「デジタル課税」の議論が何年も前から起きていた。2年前に英国出張した時も、英国側から議論したいとの申し出があったが、日本の産業界は反対の意を表明した。

 

OECDの「デジタル課税」案 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 そこではOECDの議論の行方を見てのことにしようと英国側が一旦退いたが、その後出てきたOECDの案も、GAFAなどだけではなく全部のグローバル企業を網に掛けるもので、これは受け入れられないなと思った。しかし今回のG7合意は、デジタル課税に関する議論に終止符を打たせるものだとの観測(希望的?)もある。

 

GAFA、各国の最低法人税率めぐるG7課税合意で恩恵 デジタル税撤廃する方向へ|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

 

 僕としてもそれは歓迎すべき方向なのだが、別の報道では利益率の高いグローバル企業に対し、税収の一部を消費国に還元する案も出ているという。具体的には、10%を超える利益にかかる税金の20%を還元するというもの。まだ細部の詰めも見えておらず予断は許さないのだが、税制は複雑にならないのが一番いいと僕は思う。

 

 各国の最低税率とデジタル課税論の行方、これからも注視しておく必要があるでしょうね。