Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

これって「コスモポリタン課税」?

 長らく揉めていた「デジタル課税」の議論が、どうやら決着しそうだ。そもそもの問題意識は、

 

・自国でサービスして儲けながら税金を払ってくれない。

・巨大IT産業が消費者の全てを握って不透明だ。

・もちろんGAFAは儲けすぎだ。

 

 というもので、グローバルビジネスが進展していくと、どこでどういうサービスをしているのかが不透明になり、国境の概念が無くなってくることが根源のようだ。安いところで買って高いところで売るのが「貿易」というものの本質だから、税金や電力料金の安い国にサーバーを置いて、インターネットでサービス配信するのは当たり前の話。

 

 国境のないサイバー空間でのビジネスに課税するならば、国ではない何か(例えば国連?)がすべきかもしれない。それでも各国は「COVID-19」後の財源確保のためにも、国際的に調和のとれた新しい徴税で合意する必要があった。その「妥協結果」がこれである。

 

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・世界での年間売上が200億ユーロを超える大企業で、

・利益率が10%を超える優良企業の10%を超えた分につき、

・20~30%を供給国から市場国に配分する。

・ただし銀行・保険・資源関係は対象としない。

 

デジタル課税、世界で10兆円規模に コロナ後の財源確保: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 じゃあ、どんな企業が対象になるかと言うと、いわゆる巨大IT以外の企業もいくつも候補に上っている。

 

・製薬 アムジェン、イーライ・リリー、武田薬品

・製造 トヨタ自動車

・食品 モンデリーズ

・不動産 龍湖集団

・化粧品 ロレアル

 

 これじゃどう見ても「コスモポリタン課税」である。最終的には100社ほどが選ばれることになりそうだ。結局特定業種を狙い撃つ税制というのは、合意が出来なかったということ。一方で、本来もっとすごい利益率を上げているはずの金融業界の名前がないのは何故だろうか?ヘッジファンドなどは、200億ユーロに満たなかったような気もする。将来的には100億ユーロまでハードルを下げたとしても、彼らはやはり逃れるようにも思う。

 

 会社を意図的に分割したり、税務関連の「芸」を使って利益率を下げて見せるような「抜け穴」もありそう。ただ利益率を上げて株主還元するよりは、従業員に配分したりSDGsなどに積極投資する傾向が出てくれれば、社会的な意味はある。最終決着は今年秋だそうですが、さてどうなりますかね。