Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

公共交通機関無償化の意義

 人口60万人余り、第二次欧州大戦のシミュレーションゲームThird Reich」では、わずか1ヘクスの国土、年間5生産ポイント、国防軍コマなしという無視されそうな小国がルクセンブルグ。実際このゲームでは一国への宣戦布告は10生産ポイントを支払うので、宣戦布告後3年間維持できてやっと回収できるという国である。無血占領はできるのだが戦争経済上見合うのか、「ルクセンブルグ作戦の研究」という論文まであるほど、この国の扱いは難しい。

 

 閑話休題、今の欧州連合の中でもかの国はユニークな存在だ。主要産業は金融、税率が低いのでいくつもの企業が欧州本社を置きたがる。GAFAなどのIT企業もその例外ではなく、欧州中のビジネスをかの地で仕切り、税金はルクセンブルグ政府に収めるだけ。これを怒ったフランスや(当時の)イギリスが「デジタル課税」を言い出したのは、自国でGAFAなどが巨額の売り上げを揚げながら税金を払ってくれないという不公平感が背景にある。

 

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 ただルクセンブルグでは生活費は安くない。そこで近隣国に住んでいる人たちが、仕事で通ってくるケースが多い。であれば住民税などは周辺国に落ちるから、目くじら立てるほど不公平なのかは僕にはわからない。そんなルクセンブルグで今月から公共交通機関利用を無料としたとのニュースがあった。

 

https://www.cnn.co.jp/travel/35150106.html

 

 自家用車などで通勤している人たちが公共交通を使ってくれることで、渋滞解消や環境問題対応ができるというのがこの記事の指摘する意義。公共交通機関が失う売り上げは、4,600万ドルほどだという。これは機関の運営に係る費用の8%程度。現時点で売り上げだけでは収支は全く賄えず、おそらく税金で補填していたのだろう。補填料が1割増す程度なのだから、ちょっと無理すればできそうな話。

 

 この記事にはないのだが、加えて運営費用を節減できるメリットがあると思う。乗車券を売る窓口や自動機、切符(ICカードかもしれないが)の用意や回収、現金の回収・管理、これらの業務に係る人件費などが不要になるからだ。ひょっとすると運営費用が4,600万ドル以上削減できるかもしれない。この発想、とてもユニークなのですが、そもそも赤字がひどすぎると思います。日本(特に首都圏)の公共交通機関にあてはめられるかどうか、一度調べてみましょう。