Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

OECDの「デジタル課税」案

 先月の英国出張でも、英国側から「プラットフォーマーに関するデジタル課税について、日英で協議・協調できないか」という意見が出た。これに対して日本の産業界としては、

 ・課税対象となるプラットフォーマーなるものの定義が難しい。
 ・将来有望なスタートアップスや老舗のグローバル企業に類が及びかねない。
 ・特定の業種に課す税金というものには、賛同できない。

 を理由に反対だと述べていた。これに対し英国側は、「OECDが本件に関して検討している。その結論を見てからにしよう」と一旦ホコを収めていた。そのOECDの検討状況が、おぼろげながら見えてきた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50671320W9A001C1MM8000/

 この案からは「プラットフォーマー」という言葉は消えていて、老舗も含めて全てのグローバル企業を対象としている。グローバル企業の全世界での収益を、通常の利益と無形資産による利益にわけ、後者にかかる税金を各国での売上高に比して配分するというもの。冒頭に挙げた3つの「産業界の懸念」については、一番目と三番目には配慮されているというべきだろう。しかし二番目の懸念については、おもいっきりぶつかっている。老舗グローバル企業では、危惧するところが多いだろう。

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 注目すべきは「無形資産」という概念。似たような言葉に「無体財物」というものがあり、たとえばデジタルデータなどは「無体」なのでいかに価値があろうと、盗まれても「窃盗罪」が成立しない。「無体財物は法的には守られない」ということについて、数年前に記事を書いている。

https://nicky-akira.hatenadiary.com/entry/2019/04/12/060000

 「デジタル課税」の議論はこれからだとは思うのだが、無形資産と無体財物の関係や、世界的に有名な金融機関の営業に使われる「無形資産」などをどう考えるか等、課題は多い。そもそも利益だって通常のものと無形資産によるものが適切に分けられるものか・・・これはまだまだ議論の余地がありますね。