Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

徹底した検証・情報開示を望む

 今年度の下期が始まる日、この日に新規上場を計画していた企業もあるやに聞く。しかし証券取引所は動かなかった。ごく少額だが個人投資家でもある僕は、朝930をめどにスマホでその日の日経平均や持っている株式の変動を見るのが習慣。それがこの日は、びくともしない。

 

 証券会社からも電話がかかってくるし、ニュースも「東証ダウン」と報じ始めた。「すわサイバー攻撃か!」と思ったのだが、報道によると攻撃は確認されていないらしい。原因はメモリ(多分インメモリ)の故障、これならあり得る話で、ハードディスクほどではないにせよ記憶装置はハードウェアとしての弱点のひとつだ。問題は故障を検知した後の対応である。翌朝の日経新聞によると、

 

・ストレージの故障でシステムが停まった。

・しかしバックアップシステムへの切り替えがうまくいかない。

・ストレージは機器の入れ替えで復旧したが、手動の再起動ができない。

・すでに売買注文を受け付けていて、再起動でこれらがリセットされるのは困る。

 

 よって、終日売買停止とせざるを得なかったというのだ。似たようなことは2012年にも起きていて、それに学んでいなかったことも含めて「ネバーストップ」と言うのは掛け声だけだったのかと落胆させられた。

 

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 コンピュータシステムが社会インフラに加わるようになって、少なくとも50年は経つ。その間に事故・事件の類は数多く発生した。重要インフラ事業者を筆頭に、コンピュータ納入事業者や監督官庁は、いざという時のための対策を練ってきたはずだ。それが信頼につながるのだが、今回の事件は日本社会そのものの信頼を揺るがした。このリカバリーには、徹底した検証と情報開示が必要だ。

 

 まず、どうしてバックアップシステムに切り替わらなかったのか?切り替わらなかったらバックアップと呼べないではないか。次に手動の再起動ができたのにしなかった理由も解せない。すでに受け付けた注文というが、再度注文してもらえなかったのだろうか?少なくとも手動再起動、再注文要請という訓練をしていれば、少々遅れても稼働でき「終日売買停止」には至らなかったのではないか。

 

 国家レベルのサイバー攻撃の脅威が高まっている現状では、東証システムなど格好の目標のはず。これを「禍転じて福となす」ように、サイバー攻撃も視野に入れたシステムレジリエンシイの再構築につなげていただければと思います。