Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

広島の世界経済人会議(後編)

 ランチタイムを挟んで午後のセッション、サイバーセキュリティをテーマにしたものだがテーマ設定者の意図は「民主主義の危機」にあるようだ。ここが金銭詐取や通信やエネルギーへの妨害、軍事行動などを論じている他の会議とは異なる。

 

 聴衆は70~80名くらいだろうか。午前中から増減はない。基調講演をしたラフ氏ほか何人かの外国からのゲストも同時通訳レシーバーを着けて聞いている。ラフ氏の隣には主催者代表湯崎広島県知事も座っている。

 

 まずモデレーターが「サイバー脅威」の説明をした。デジタルに詳しい人は少ないとの配慮から、非常に平易な言葉で丁寧に話している。続いてリスクの専門家が、2016年の米国大統領選挙への外国からの介入について紹介した。主張は、「ロシアのサイバー攻撃は、トランプを勝たせるとかヒラリーを落選させるという目的以上に、米国民の民主主義に対する信頼性を失わせることにあった」というもの。これは意図した通りの結果を生んだという。

 

    f:id:nicky-akira:20191026062233j:plain

 

 続いて産業界の人が、「産業界はロシアのウクライナへの攻撃で大規模停電が起きたことを重視し、まず重要インフラ企業やこれを直接支える企業の防御力強化に努めている。しかし社会全体での意識を高めることも重要だ」と述べ、セキュリティ企業のCEOが、サイバー攻撃に対処している現場の実情や問題点を話した。

 

 その後パネリスト同士のやりとりもあって、徐々に議論が盛り上がってきた。モデレータはあまり話さないのだが、うまいリードだったと思う。最後に聴衆から数件の質問が出た。面白かったのは、「この分野で日本が世界(平和)に貢献する方法はないのか」という質問。さすがに「平和会議」である。

 

 パネリストは直接の回答ではなかったが、「まず新しいデータの使い方を考えること。10年以上前から世界のコンテナの情報は海運会社間で共有されている。例えば日本中のトラックの情報を共有したエコシステムを構築すれば、国連のSDG'sにも貢献できる。それを世界に広げればいい。エコシステムを裏で支えるのがサイバーセキュリティだ」と言った。

 

 会議の全体テーマが、平和はもちろんだがSDG'sもだったのでうまくつながった。民主主義への脅威についてはうまい展開はなかったのだが、この手の会議で前向きな質問がでるのは珍しいと思った。広島・平和&サイバー脅威の組み合わせ、面白かったです。