慶應三田のイベント「Collaborative Pathways to Securing the Cyber Ecosystem」は、北館1階のホールで、14時から始まった。150人は入る立派なホールだが、観客の入りはちょっと寂しい。30人・・・精々40人だろうか。同時通訳があるとはいえ、ほとんどが英語で行われることがハードルになっているのだろうか。
まず「日本のインターネットの父」である村井教授が挨拶に立ち、「サイバー文明研究センター」の紹介をした。慶應にはKeio Global Research Institute(KGRI)という研究機関があり、長寿・安全・創造の3セクターで文理融合研究を進めている。
http://www.kgri.keio.ac.jp/about/index.html
「Cyber Civilization Research Center」は、その中の一機関。以前紹介したFarber教授がセンター長である。安全なサイバー空間をどう構築するかが、主なテーマだ。挨拶の次はRattray教授の基調講演。南極条約から核危機だった冷戦時代の経験を語り、国際的な「新しい危機」にどう対処してきたかを述べた。教授は「サイバー空間はアリゲーターが住む沼のようなもの」と、沼に「規範」を作ろうと講演を締めくくった。
その後、Farber教授のモデレートで、Rattrey教授・村井教授・国際法学者・産業界の人が登壇して1時間ほどのパネルディスカッションを行った。この「沼」に対して、
・南極条約のような合意形成は難しく、Paris Callどまり。
・例えばサイバー攻撃にどこまで反撃していいのか、規範は存在しない。
・国連も機能しないし、技術革新が激しく規範作りの努力が追い付けない。
というものだった。聴衆から「三菱電機の事件もあった。産業界はどうするのか」との問いに産業界の人が、
「民間セクターは反撃できない。侵入を検知したら知らぬふりして偽情報を掴ませるくらいが精いっぱい。だから予防に注力しなくてはならず、重要なのは(自社の敵は誰でどう襲ってくるかなどの)インテリジェンス活用だ」と述べた。
最後に國領常任理事が登壇しイベントの総括をするとともに、「サイバー文明研究センター」のTOPがFarber教授から村井教授に替わることを告げた。村井先生は今年度で定年退官と言われていたが、慶應に残られることになったわけだ。なるほど、このイベントはTOP交代のお披露目だったのねと、その時ようやく気付きました。