Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

迷惑施設誘致の闇を払う(後編)

 昔「東京に原発を」と題した本が売れたこともあった。政府や電力会社は「日本の原発は安全です」と連呼しているが、それなら東京都心に建設したらどうだという主張だったと記憶している。もちろん経済合理性でいえば、都心は地価が高すぎる上に地権者が入り組んでいてとても不可能なのだが。

 

 もっと昔、鉄道(当時は陸蒸気といった)の路線を引こうとすると、「煤煙が困る」とか「家畜が騒音におびえる」といった理由で反対する人たちがいた。欧州の古い街で中央駅が中心地から外れたところにあるのは、地価以外にもハードルがあったことを思わせる。

 

 今となっては鉄道駅は「迷惑施設」ではないが、どこかで負担しなくてはいけないがウチには来ないでと言わせるものはたくさんある。これらを引き受けてくれたら、見返りに「交付金」などのインセンティブがあるよというのが普通だが、それでも住民一致と言うわけにはいかないから、前編で述べたような「闇」がでてくる。

 

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 僕は「迷惑施設」の誘致は、住民の総意で決めればいいと思っている。住民自身がメリットとデメリットを判断して選択(具体的には投票)すればいいのだ。そんなことしたら、どこにも「迷惑施設」は建設できないという批判に対して、僕の案はこうだ。

 

 ◆まずその地域の住民の税負担(例:住民税)を倍かそれ以上に上げる。

 ◆続いて「迷惑施設」をランキングして、住民税減税の比率を定める。

  ・核廃棄物貯蔵施設 100%

  ・原子力発電所 50%

  ・米軍基地 50%

  ・ゴミ焼却場 10%

 

 「迷惑施設」の多い自治体に住めば、税負担が減るとなれば移住してくる富裕層もある程度いるだろう。自治体は減税した分を補った以上に税収が増え、地元の商店街などに落ちるお金も増える。「迷惑施設」を引き受けたことによる恩恵である。

 

 一方「迷惑施設」の全くない自治体では、税収こそ増えるものの市民の不満は大きい。また税金を払う人は出てゆき、税負担のない人ばかりが流入してきて財政危機に陥るかもしれない。そこで「迷惑施設」を誘致しようという動きが出る。

 

 「迷惑施設」の見返りとして市民に直接の恩恵が少ないハコモノを建設するよりは、市民のふところに直接訴えかけるこの案の方がより実感をもってもらえるのではないでしょうか。今回は、僕が夢に見た社会システム全体へのご提案でした。