Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

迷惑施設誘致の闇を払う(前編)

 関西電力高浜原子力発電所を巡る疑惑を、各メディアがこぞって取り上げている。確かに前時代的、時代劇にでてきても陳腐と思われるようなシナリオやエピソードが一杯だ。僕も菓子折りの下の金貨なんて、本当にあったのかと驚いている。

 

 福島第一の不幸な事故以前にも、原子力発電所そのものが「迷惑施設」である。しかし日本のエネルギー事情を考えると、どこかに立地させないといけない。電力会社やその後ろにいる霞ヶ関は、懸命に受け入れてくれる自治体を探し「交付金」をはじめとする多くのインセンティブを用意した。

 

 高浜市の元町長や市民のインタビューを聞くと、過疎化・財政危機が迫り上記のインセンティブに魅力を感じて受け入れた事情が浮かび上がる。道路や水道などのインフラも整備され、各種のハコモノ(体育館や温泉施設など)も建った。建てるだけでも地元の建設業者などに仕事が巡って来る。

 

 「高浜原発の誘致は、全体としては良かった」との元町長のコメントは、ある程度うなずけるものだ。ただその過程で、今回明らかになりつつある多くの不正や怪しげな行為があったことも確かだ。地元の有力者が剛腕をもって誘致を推進、少なからずいる反対派を抑え込みインセンティブを地元に落とす。その過程で自らやその周辺にもおこぼれがあり、その一部は電力会社を操るために使う。ひょっとすると関係する政治家や官僚にも流れていたかもしれないと勘繰る人もいるだろう。

 

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 僕は、電力会社一家の家庭で育った。ホームパーティには、親父の同僚や部下たちが大勢やってきた。だから電力会社の行動様式には、多少の知識がある。親父は「現場の職人」だったが、一番嫌っていたのが「用地」という部署。電柱一本建てるのにも用地交渉は必要だ。地主を納得させるために手土産を持っていき、場合によっては呑みに誘う。こういうことが苦手な親父は、「用地」の仕事だけはしたくないと言っていた。

 

 この「用地」の仕事の巨大になったものが「原発立地交渉」だと思う。電柱一本なら小さな闇だったものが、原発一基となれば巨大なものになったのは容易に考えられる。原発以外にも、大は核廃棄物貯蔵施設から小はゴミ焼却場まで「迷惑施設」はいろいろある。これらを各自治体が、このような闇をくぐらなくても市民の合意を得て誘致できるような制度はないか、僕なりに考えてみた。

 

<続く>