熱海駅の改札口を出ると、そこは小規模なロータリーになっていて、午後になると旅館からのお迎えのマイクロバスが客待ちをしている。ロータリーの右手の方に進むと熱海の市街地方面だ。熱海港にしても、熱海銀座にしても、市役所やショッピング街にしても、右手の坂を降りていくことになる。
そこには全長100ｍあまりのアーケード街があって、「平和通り名店街」とのタレ幕が下がっている。駅に降り立ってこの坂を下りていくときにはわからないのだが、帰りに駅の方面に向けて坂を登ろうとすると、「旅のファイナルを飾る素敵な通り」と大きな看板がかかっている。どう「素敵」なのかと言うと、干物などを売るお土産物屋さんが約半数と多いので、まあ手土産でも買っていってよということだろう。
その他にも、立ち食いのものを売る店、食堂・レストランの類（海鮮・蕎麦・ウナギ・丼もの・中華・ラーメン・寿司・和食など）、郵便局、ホテル、コンビニのほかに薬屋や靴屋・鞄屋・床屋まである。小規模な温泉を流しているところの脇にはスペースがあって、お猿さんのショーなど大道芸を見せてくれることもある。
中央の何か所かに緑色に塗られたベンチがあって、観光客らがソフトクリームをなめたりスナックをかじっていることが多い。おおむね全部禁煙なのだが、タバコ屋の前のベンチだけは喫煙可だという。
最近観光客がたくさん戻ってきて、休日出かけるときなど人込みが多くてこの坂をぬけるのが大変である。ただ、このアーケード街の商店は閉めるのが早い。オフィスを定時に出て帰ってくると、大体午後７時の少し前にこの坂を通りかかるのだが、飲食店の一部を除けばシャッター街と化している。おおむね観光客はホテルにチェックインしていて、おそらくは宴会の始まるころ。二次会に街へ繰り出すには早すぎるし、繰り出す先は坂の下熱海銀座かもっと先だ。だからここは僕のような人が通るだけ。
そんなころあいには、商店街の「主」がゆっくり歩いていたり、道路を見下ろすところでうたたねをしている。「主」というのがこの猫たち。何匹かいて、飼い猫なのか野良ネコなのかも分からない。道の脇にエサをやる場所があるようなので、全部が飼い猫ということではあるまい。大きなお腹をして歩いていることもあるし、姿を見たことはないが子猫の鳴き声がどこからか聞こえることもあります。「繁殖地」がどこかにあるのでしょうね。
