Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

令和元年「警察白書」(前編)

 サイバーセキュリティなどという陰気なテーマに関わっていると、これまでとは違う人たちとお付き合いすることになる。過去数年で、いずれも元が付くのだが、CIA長官・FBI長官・米海軍司令長官・海上自衛隊隊司令長官などにお目にかかっている。先日はオフィスに見慣れない封筒が届いた。送り主は「警察庁」、まさか逮捕状じゃないよねと開けてみると「令和元年警察白書」が出てきた。もちろん下記Webで公開されているものだが、昨年ある部署の警視長(警部・警視・警視正の上)と名刺交換したから送ってもらえたようだ。このクラスの人は、普通のミステリーには登場しない。

https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/index.html 

 内容は7章立てで、第三章が「サイバー空間の安全確保」となっている。第二章「生活安全の確保と犯罪捜査活動」に比べると随分薄いのだが、ひとつの章として取り上げられていることだけでも僕らは喜ぶべきだろう。平成30年の検挙件数約30万件中、サイバー犯罪検挙数は微増しているとはいえ9,000件あまりと少ない。その中でも最大のものは児童ポルノ・買春系で2,000件あまりである。

 

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 サイバーテロサイバー攻撃の脅威は丁寧に書かれてはいるものの、実態として検挙されたものはほとんどないようだ。ただひとつのセンサーに対する1日あたりの不審なアクセス数はうなぎのぼりで、平成26年に500件弱だったものが平成30年には2,700件以上、5年間で5倍以上になったわけだ。機関銃のタマをばら撒くような自動攻撃は確実に増え、インターネット環境が年々厳しくなっているのはわかる。

 児童ポルノのようなものは別にして、サイバー犯罪の中で目立つのは不正アクセス。平成30年でも520件が検挙されている。このうち技量に優れたハッカーセキュリティホールを狙った攻撃でID・パスワードを盗んだものは18件しかない。一番多いのは利用者本人の管理の甘さ(初期パスワードを変えていないとか、1234のような単純なパスワードを使っているなど)を衝いたものだ278件と過半数を占め、平成29年から増えてもいる。

 

 一方で一時期被害が多かったインターネットバンキングの不正送金は、銀行など金融機関の対策が徹底してきた効果で、平成30年には4.6億円ほどに減った。ピーク時の平成27年(30.7億円)からは1/7ほどの抑えられている。

<続く>