Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

脅威インテリジェンスの活用

 エジプトのカイロ周辺で騒ぎが起きているという話は聞いてはいた。昨年末、政府当局が過激派の拠点を急襲して40人あまりを殺したという。それ以降散発的にだが、市街地で爆弾が爆発し警官が犠牲になったり、路上での銃撃戦、観光バスへの爆弾攻撃で観光客が負傷といった事件が起きていた。
 
 これらの件と関係あるかどうか分からないが、前大統領のモルシ氏が6月に法廷で倒れ亡くなっている。モルシ氏は、敵対する外国や武装勢力ハマスら)のためのスパイだった容疑がかかっての出廷だった。スパイスリラー風に言えば、証言を怖れた武装勢力が暗殺したとか、当局がそうみせかけて法廷費用(含むかける手間)を削減した可能性もある。

 ともあれ観光が主要産業でもあるエジプトで物騒な事態になっているのは国としても困るだろうが、モルシ氏を弾劾して後釜に座ったシシ大統領はムスリム同胞団への弾圧をやめていない。興味深いのは、このような状況の中でBritish AirLufthansaがカイロ便を1週間運行停止にしたこと。言うまでも無く、航空会社が意図的に航空便を欠航させるというのは大きな損失を伴う。これを断行した背景はいくつか考えられる。

 ・治安悪化で渡航する人が減り、飛ばさないほうが得になった。
 ・渡航するビジネスマンや観光客の安全を現地で確保できなくなった。
 ・航空機そのものへのテロについての具体的な情報が入った。

 最初の可能性はともかく、残りは英・独政府が何らかのインテリジェンス情報を航空会社に示してこそ起きることだと思う。運行停止による損失に見合うほどの脅威情報ということだ。政治的混迷を深めているとはいえ、007の国の諜報力はあなどれない。また民間企業が個別に収集するようなレベルの情報でもあるまい。
 

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 サイバーセキュリティの議論を重ねていると、いつの間にかサイバーエスピオナージの入り口に来てしまうことがある。例えば「APTxxが、秋のラグビーワールドカップを狙って鉄道網を混乱させようとしている。狙われるのはxx社製の列車制御機器。保守ネットワークを使って、xxウィルスを仕込んでくる」というような脅威インテリジェンスをどうやって得て、分析して、現場に伝えて備えるかということ。

 僕自身はこのようなことを見聞きしたことはないが、日本政府からそんな脅威情報が来たら日本の企業は対応できるのだろうか?さりげない英独航空会社の発表を聞いて、ちょっと深読みしてしまいました。