Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

機関銃の支配

 敵兵が群がる戦場に、立て続けに弾丸をバラまく。そういうシーンを思い浮かべ、技術者たちは連発銃の開発を続けてきた。19世紀中ごろ、ガトリング砲として知られる連発銃や類似のものが完成した。日本でも戊辰戦争越後長岡藩(家老:河合継之助)がこれを導入・使用した記録がある。
 
 本格的に機関銃が戦史に登場するのは、20世紀初頭の日露戦争。旅順要塞に肉弾突撃を繰り返した日本軍だけでなく、ロシア軍も機関銃によって苦しめられた。そして、第一次世界大戦。ヨーロッパでは今でも「世界大戦といえば第一次」を指すことが多い。それほどの人的被害を与えた主役は、機関銃だった。
 
 敵兵が目前に迫れば、冷静に銃撃を加えられる兵士の方が少ない。ところが適切に設置された機関銃は、銃手がいかにうろたえても、ボタンを押しさえすれば弾丸をバラまき続ける。膨大な犠牲者を出して、各国は機関銃対策を考え始めた。その答えは、第二次大戦直前になっても確定していなかったが、そのひとつが、AFV(Armored Fighting Vehicle)である。
 
 第二次大戦をシミュレートしたゲームを使って、機関銃の脅威と対策を説明しよう。使ったのは、昔アバロンヒル社が出していた "Advanced Squad Leader" 。膨大な資料をもとにデザインされたもので、第二次世界大戦の陸戦シーンのほとんどを再現できるものだ。

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 最初の写真は、ドイツ軍の指揮官(士気9・指揮能力-1)が2個分隊(火力4・射程6・士気7)を率いて、ソ連分隊(火力4・射程4・士気7)がたてこもる石造建物に対峙しているシーンである。
 
 ドイツ軍の分隊は森に隠れているので、比較的安全だが、近い方の分隊Rからでも目標までの距離は3ヘクスある。1ヘクスは40mなので約120m離れているということ。その間は遮蔽物がない。分隊の1ターンの移動力は4ヘクス分あるので、2個分隊とも建物の隣接ヘクスまでは、1ターンで行くことができる。
 
 しかしそんなことをしたら、ドイツ軍は全滅するかもしれない。ソ連軍は、信頼性はいまいちだが中機関銃(火力4・射程10)を持っているからだ。指揮官が2個分隊の火力(合計8)を指揮(サイコロの目にー1できる)しても、石造建物は+3の防御効果(これもサイコロの目の修正)を持っているので、なかなか潰走させられない。
 
 かといって遮蔽物のない地形を突撃すれば、危険な移動をしたとしてサイコロの目の修正がー2もあるので、こちらが潰走させられるか除去されかねない。しかも機関銃は(一定の条件下でだが)複数の目標を射撃できるので、2個分隊とも除去されてしまうかもしれない。

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 そこで Urban中尉は、AFVの支援を求めることにした。3号突撃砲が到着したところが、下の写真である。
 
 ◆3号突撃砲B型
  主砲:短射程75mm、機関銃など他の兵装なし
  車高:砲塔がないため低い
  移動速度:14ヘクス/ターン
 
 主として、敵の機関銃座を破壊することを目標にして設計されている。歩兵の支援用なので、歩兵と共同で戦闘することから、敵歩兵を追い払うための機関銃などは持っていない。
 
 砲塔が無く、主砲は車体に埋め込まれている。射界の外に敵が出現したら、車体ごと回して照準し直さなくてはならない。しかし、主目標が機関銃座なら固定目標なので、問題にならない。装甲は厚い方ではないが、機関銃弾くらいではカスリ傷もつかない。
 
 3号突撃砲が位置につけば、ドイツ軍歩兵は突撃砲の後ろ(F5のヘクス)から目標に接近できる。AFVが盾になって、上記危険な移動をした場合の修正-2が適用されないからだ。突撃砲は、砲塔がない分戦車に比べて製造コストが安く、前線での整備も比較的容易だった。歩兵にとっては、最良のカメラード(戦友)となったのである。