Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

重要インフラの事業継続計画

 事業継続計画(Business Continuity Management : BCP)という言葉が、日本の業界で語られるようになったのは2005年頃だった。ルーツをたどると、2001年のワールドトレードセンター(WTC)ビルに航空機2機が突っ込んだテロ事件に行き当たる。米国の対テロ戦争開始などいろいろなことの引き金になった事件だが、ICTの分野にも影響があった。

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 WTCのテナントには金融機関が多く、もちろん多くの金融機関が非機能状態に陥った。全米の決済の大半が止まり、経済は大混乱した。ところが(伝説かもしれないが)、WTCに入っていたある金融機関が、その日のうちにバックアップオフィスで業務を再開したというのだ。
 
 日ごろからバックアップオフィスを用意し、そこで実務もしていたからメインオフィスが使えなくなったら直ぐBCPを発動したのだ。要員も速やかにバックアップオフィスに移動、訓練もしてあるので迅速に業務の立ち上げをしたと言う。
 
 事件後多くの金融機関がこの方法を導入、バックアップシステム/オフィスを用意し要員の訓練も始めた。ICT業界にとっては、ある意味特需。場合によっては同じだけの設備を買ってくれるのだから。この流れは金融機関から製造業、例えば半導体業界に広がり、太平洋を渡って日本にもやってきた。日本のICT業界も外資系ICT産業やコンサル業界に負けないように、危機管理ソリューションやコンサルタントを市場に投入した。
 
 にわかコンサルタントたちは、自らの権威づけのためにいろいろな事例を漁った。海外事例もいいのだが国内の有名企業などで、昔からやっているような事例があればユーザー企業には訴えかけやすい。そんな中で見つけたのが、新幹線の総合指令所でやっている第二指令所での実運行。
 
 
 年に一度、単なる訓練ではなく実際に東海道山陽新幹線のオペレーションを大阪でできるようにしているのだが、その現地ルポがあった。東京がやられても、東海道山陽新幹線が止まらないようにする仕掛けである。JRのような重要インフラ企業としては当然の対処なのかもしれないが、立派な企業努力と思う。またこういう場所は普通秘匿して狙われないようにするのですが、取材に応じた姿勢にも好感が持てますね。