Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ノートルダム大聖堂の再建資金

 漏電による失火の公算が高いように思うが、シテ島ノートルダム大聖堂の焼失は非常に残念なことだ。言うまでもなくパリのシンボルのひとつだし、観光で行った時には必ず廻る名所である。「Hop on Hop off」の周遊バスでパリ市内を巡ったときも、ここは必ず下車するところだった。先月も仕事でパリに行ったが、リヨン駅前の定宿ホリディ・イン・バスティーユからはセーヌ川ごしに良く見える建物でもある。

 貴重な文化財を救出した消防士らは英雄になり、再建にむけた動きも極めて迅速に走り出した。例えばエール・フランスは、大聖堂復旧にあたる人の航空運賃を無料にすると発表、公人・私人を問わず再建用費用の寄付はたちまち積みあがった。陰では再建費用を騙る詐欺も大々的に起きているようで、バチあたりなことをするものだとあきれる。

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 詐欺はともかく、善意の寄付が集まってきてそれが1,000億円を超えるほどになるとそれが不和のもとになるという、ある意味情けない話も伝わってきた。全部再建に使うのではなく、貧困層の救済にもいくらか廻すべきだとの議論だ。

http://news.livedoor.com/article/detail/16339141/ 

 普通に考えれば、寄付は大聖堂再建のために集まったものだから、他に転用するのは許されないだろう。ただこれにはウラがある。寄付が善意だけとは言えないとの見方だ。それは大富豪や大企業が1億ユーロ(130億円)以上の寄付をして、その分の税額控除を受けるからだ。つまり上記の主張は、表向きは「他に必要な事があるときに、せっかくのお金を大聖堂再建だけに使うことの非」を問うているのだが、実は大聖堂の奇禍を利用して大富豪・大企業がうまい汁を吸おうとしているぞと非難しているわけだ。

 昨年暮れから2度パリに出かけていて黄色いベスト運動もそれなりには見知っていたので、フランス社会における格差問題の根深さは感じているつもり。ある大富豪は「公益になることをしても批判される」とあきらめ顔だが、ここまで社会の分断が深いと単なるデモ以上の何かが起きるような気がしますね。