Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

笹川USAのいう5Gリスク(後編)

 昨年末にSasakawa USAの「日米欧三極委員会」が、5G関連のレポートをまとめている。最初に慶應大学とのカンファレンスで発表されて以降、今年のRSAカンファレンスでも話題になった。主な問題意識は、

 

5Gには経済リスクがあり、社会全体のセキュリティリスクを高める。

・中国の国家的な市場占有で、日米欧三極の安全保障に及ぶリスクもありうる。

・国家情報セキュリティ、貿易不均衡、知的財産窃盗などのリスクにさらされる。

 

 のようなもので、事実上中国を名指ししての告発に近い。中国は、

 

HuaweiZTEを国家助成金により5G技術のチャンピオンに育てている。

・欧米の技術を、共謀やスパイ行為などで不正に取得している。

HuaweiZTEは、北京の指示で外交政策に関与していた可能性がある。

 

 ことを並べて非難しているのがこのレポートの前段だ。中国には「国家情報法」という法律があって、中国企業は知りえた情報を国家に提出しなくてはならない定めになっている。かりに全世界にこれら中国企業5Gネットワークが張り巡らされたら、そこに流れる通信はすべて北京の習大人の知るところになるわけだ。

 

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 だから米国はこれらの中国企業から5Gモノを買うなというのだが、すでに膨大な国家支援を受けて技術開発を済ませている中国企業に納期・性能・価格などで対抗できる企業は日米欧にはいない。したがって英国政府のように「クリティカルなところには使わないが、普通の市中には中国製品を入れる」と折れたケースも出てくるわけだ。

 

 ではどうすればいいのか?レポートはいくつかの方針を挙げていて、

 

・海外からの機器購入に対しリスクを高めないレビュー体制を作る。

・違法行為を行う5G機器提供者への罰則を強化する。

・自由市場原則に従った、安全な代替5Gセクターを構築する。

・私企業で及ばない基礎研究に、国家が投資する。

 

 ことを勧めている。ただすでに何年か先を走っている企業やそのバックの国家に対して、即効性のある対抗策とは言えないだろう。この問題、僕ごときには知恵はなく、冷静になって考えることが必要だと思います。そのための時間が欲しいので、魅力的なサービス/アプリケーションの登場を待ってほしいと思うわけです。

笹川USAのいう5Gリスク(前編)

 楽天の新規参入がどうなるのかはわからないが、どうやら携帯キャリア3社の第五世代(5G)移動通信システムの料金体系が見えてきた。各社現行4Gの料金にわずかに増したプランを提示している。これはまだ5Gを使える領域も限定されている上に、魅力的な(5Gでなくてはいけない)サービスの登場がまだだからだ。

 

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2003/24/news055.html

 

地域限定については、以前大手キャリアの幹部がB20の場で発言したように「5Gはオーバーレイ、4Gの上に重ねる形のサービス展開をする」からだ。ユニバーサルサービスとして津々浦々に展開するものではないと、最初から分かっていた。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/05/22/060000

 

 魅力的なサービスについては、例えばオンラインゲームや動画配信を3G携帯では楽しめなくなったことを思い出していただければ分かるだろう。3G携帯用のサービス/アプリをはるかに超えた画質・音質でゲームや動画を楽しむためには、4Gの通信能力が必要とされる。

 

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 だから4Gゲームや動画を超える画質・音質のアプリ/サービスが出てくるまでは、4G携帯でも5G携帯でもできることに大差はない。ゆえに現時点では料金体系も4Gを超えて・・・は難しいのだ。新しい技術を導入する最初は、何でもそんなものだ。一桁以上上がった性能を活かせる何かがなければ、誰も技術だけを喜んで買ったり使ったりしない。技術には、それに合ったアプリケーション(応用分野)が付いていなければ意味がない。

 

 僕は40年間新技術とそれに合うアプリケーションやサービスを追いかけてきたので、早くそれらが出てきてほしいと思うし、競合他社より早く見つけないといけないと意気込んでいた。ただ今回だけは、魅力的なアプリケーション/サービスがしばらくは出てこないことを祈っている。それというのは、5G移動通信システムを巡る国際対立が激しいからだ。よくトランプ先生が「Huaweiを叩き潰せ」などと喚いているが、中国企業5G技術で優位性を持っていてそれが米国の安全保障にも直接的に影を投げているからだ。

 

<続く>

ダーリントンホール・総務省店

 この日は国土交通省の会合があって午後、霞が関に出掛けた。もともとデジタル政策からみでは「早慶戦」ならぬ「総経戦」の総務省経産省が主体。21世紀になったばかりの頃、通ったのは内閣官房IT戦略室(現IT総合戦略室)だったが、要員の出向元の多くはこれらの府省だった。

 

 しかしデジタル技術がいろいろなシーンに浸透してくると、他の府省からもデジタル政策からみでお呼びがかかるようになってきた。その一番手は元来技術要素の強い「国交省」。同省はいち早くデジタル技術担当の審議官を置いたので、時々訪れることになったわけだ。

 

 同省にはテクノロジーを議論する会合が多く、その中でもデジタル論が徐々に増えている。担当官も(もともと技術屋さんも多く)真剣にデジタル技術を勉強して活用の道を考え始めた。道路局や港湾局など個別の部署では現業もあって難しい点もあるが、総合政策局でまとめて考える方法で利用を進めようとしている。

 

 今日はそんな会議の後、「簡単な懇親会を用意しています」と言われた。のこのこついて行くと、国交省の入っている合同庁舎3号館から総務省警察庁の入っている2号館に案内された。2階に上がると警察庁の入り口の反対側に「ダーリントンホール」というカフェがあった。

 

 日東紅茶系列の店舗で、ランチ営業が中心らしい。席数は多く、恐らく60人くらいは詰め込めるだろう。今夕は国交省の人たちと会議出席の民間人で「貸し切り」状態。テーブルの上にはおつまみが全部出てしまっている。サラダ・サンドイッチ・ハム等の盛り合わせ、からあげ、焼きそばまである。

 

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 飲み物もビール・ワイン・焼酎とひととおりあるが、居酒屋というよりは軽食で軽く呑もうという雰囲気だ。会議の議論は結構白熱したので、その余韻を込めて乾杯となった。しばらく会議の延長のような話を続けていると、サプライズの品が・・・。

 

 え?ますの寿司本舗「源」の二段重ねますの寿司だ。どうしたのですかと聞くと、ちょうど北陸から来た来客の手土産だとのこと。こんなものが持ち込めるというのが、庁舎内カフェにいいところかもしれない。貴重品だからゆっくり味わった。

 

 途中からワインになったが、少しずつお寿司をかじりながらなので白ワイン。いや、美味しかったですね。お礼の意味も込めて、これからの議論も一生懸命やりますよ。よしなに・・・。

屯田兵制度

 中国の歴史書を読んでいたら「屯田兵」を最初に考案したのは、三国志の英雄曹操であったと書いてあった。いわく、

 ・軍を支えるのは食料である。
 ・しかるに農民から略奪すれば、軍は支持を失う。
 ・農民は逃散するか武装する。
 ・ならば最初から武装している兵士に、食糧生産をさせてはどうか?

 ということらしい。曹操官渡の戦い(200年)で袁紹と対峙したおり、烏巣の補給基地を急襲して凱歌を上げたことがある。戦争とは補給戦であることを、良くわきまえた将軍だったのだろう。

 さて、時代は下って20世紀後半の日本。コンピュータがらみの開発が目白押しになっていたころ、どのベンダーも元請会社だけでは需要を賄えなくなっていた。関連会社とか協力会社から要員の補充を受けたり、タスクのうちのある単位を丸ごとお願いすることは日常的なことになっていた。
 

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 いわゆるIT要員を、元請会社だけで確保することは難しい。供給源(大学・高専・高校)の問題もあるが、ある程度年齢がいってからの処遇を考えると元請会社の採用には上限があるからである。

 一方、若い人材を大量に抱え、将来を考えると元請会社からだけの発注に頼っていることが不安になった「関連会社」としては、自ら事業を興し独自受注を図ろうとする。徐々に独自事業が膨らんできたところに、元請会社から「無理な日程・開発量」の要求が降ってくることもある。そもそも、元請会社もお客様から「無理な日程・開発量」を押し付けられているのかもしれないが、この圧力は相当なものになる。

 だからといって、独自受注・開発に振り向けていた「精鋭部隊」を元請からのプロジェクトに振り向けるわけにはいかない。こちらも、お客様との約束があるのだから。

 そこで「屯田兵制度」というのを考えたものがいた。つまり、精鋭部隊を昼間は独自プロジェクト(戦争)に充て、夜間は元請プロジェクト(農耕)を担当させるわけ。完全な労働基準法違反だが「24時間戦えますか」の上司が指揮していた時代なのだから、まあ大目に見てあげてください。

大戦後期米軍のAFV(後編)

 投入時期が遅くあまり実戦の役に立たなかったと思われるが、米軍の工業力は強力なAFVを開発、実戦配備していた。右から順に、


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◆M4A3E2戦車
 兵装:主砲長砲身76mm砲。車体機関銃(火力2)、
    同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力4)
 装甲は厚い。(正面18、側面他8)
 移動速度:12ヘクス/ターン
 
 M4シャーマンの最終形である。ファイヤーフライというあだ名もあった。76mm砲はほとんどの敵AFVを破壊する能力があり、機関銃火力も十分である。問題は、全てのM4に言えることだが、車高が高いことである。
 
◆M24軽戦車
 兵装:主砲75mm砲、車体機関銃(火力2)、
    同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力4)
 装甲は薄い。(正面6、側面他3)
 移動速度:18ヘクス/ターン
 
 軽量で速度が速い。ひょっとしたら空輸を可能しようとした戦車かもしれない。現にベトナム戦争ディエンビエンフーの戦いではフランス軍の戦力でもあった。現存してる車体もあり、オアフ島の陸軍の博物館前に展示されているものを見たことがある。
 
◆M26パーシング重戦車
 兵装:長砲身90mm砲、火力2)、同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力4)
 装甲は厚い。(正面18、側面8)
 移動速度:12ヘクス/ターン
 
 90mm砲はやはりほとんどの敵戦車を駆逐できた。能力には全く問題はないのだが、投入時期が遅かったことであまり役には立たなかった。数量をそろえることもできなかったが、朝鮮戦争で多少は活躍したという。 
 
 これらのAFVは第二次大戦後も、いくつかの戦場に登場する。ただ、時代は戦車のものではなくなりつつあったことも確かである。