先日「真のDXは新しいデータ活用にあり」と持論を申し上げたが、デジタル経済や政策に関わっている人は「データ活用」の重要性を理解して、各種の促進施策を考えてくれている。一つには当該データが個人情報として厳重に扱うべきものかどうかという点で、例えば「匿名加工情報」は個人情報の範疇に入らないし、個人情報のうちでも「仮名加工情報」は少し利用制限が緩和されるという。
加えて金銭面での支援もある。機器のデータを活用することで生産性を向上させようとする企業に対し、税制控除や特別償却措置、特別利率での貸し付けという優遇をしようというもの。これを「コネクテッド・インダストリーズ税制」、通称IoT(Internet of Things)税制という。
「認定革新的データ活用産業計画」を策定して、関連設備投資や賃上げ(生産性向上するから)をした企業に上記優遇を認めようというもの。条件として、
・社外データの取得、初めて社内連携するデータの利用
・企業競争力を強化する重要データの社内・グルーク内連携
・必要なセキュリティ対策を講じている
・労働生産性(2%/年以上)投資利益率(15%/年以上)向上見込み
が挙げられていた。もう一つ条件があって、センサーやロボット、デジタル機器、ソフトウェア、セキュリティツールなど合計で5,000万円以上の投資をすることである。霞が関として面白い取り組みとは思っていたのだが、制定1年で廃止になってしまった。
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/data-katsuyo/iot-zeisei/iot-zeisei.html
廃止の理由はよくわからない。2~3年やってみてというならともかく、昨年4月に制定して今年3月に廃止、予定外の廃止だったことは、セキュリティの担保項目に「登録セキスぺ」の判定が必要なのに、当該資格の登録がこの4月だったことでもわかる。
あえて理由を考えると説明文中に「中小企業等」という言葉があり、時代遅れの批判がある日本の中小企業を構造改革しようという思いが税制を作ったときにあっただろうこと。しかし日本の中小企業には、この税制を利用する準備ができていないと思う。そもそも構造改革が必要なのは税金を払っていない事業者が多いから、税制控除は意味が薄い。目的と手段がすれ違い、時期が早すぎた政策だったように思います。