Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

真のDXを求めて(後編)

 DXの意味は「新しいデータ活用」にあり、と前編で申し上げた。僕が社会人になったころより何桁もデータ活用の可能性は増えているから、続々出てくるだろうと期待していたが実はそれほどでもない。良く聞こえてくるのは、SNSなどソーシャルメディアのデータ活用。「xx」というつぶやきがどう拡散して社会に影響するかのような話や、個人のWeb検索履歴などからその人の嗜好を割り出し、的確な広告を打つようなことばかりだ。

 

 業界にはデータ活用という言葉を即「個人情報活用」と捉え、「プライバシー侵害だ」と叫ぶ人たちもいる。ちょっと待ってほしいと思ったのは「個人関連情報は全部個人情報だ」と吠える弁護士さんなど。確かに僕の運転している自動車だが、そのエンジンの回転数って僕の個人情報だっけ?

 

 インターネットにつながっているのは、個人のPCだけではない。機器の内部に組み込まれたセンサーなどもデータを発信し、しかるべきとところに集約される。例えば羽田・フランクフルト便が飛べば、40TBほどのデータを吐き出すと聞いたことがある。もちろん28C席の僕がどんなエンタメを見たかという「個人情報」もあるが、機首の方向、高度、気圧、燃料の残量、離着陸時の振動など機器のデータも含まれる。

 

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 先進国の中ではまだ工業・製造業の比率の高い日本では、こういう機器データの活用がDXの有力候補になることは疑いがない。すでに自動車は20年ほど前からデジタルセンサーを一杯埋め込んでいる。上記の航空機ほどではないが、何しろ数が多いので膨大なデータを日々生み出している。これを利用しない手はあるまい。

 

 DXパイオニアを目指す皆さんに気を付けてほしいのは、エンジニアリングではなくてリーガルの制約。データは「無体財物」なので所有権は存在しない。もちろん占有もできない。しかし利用権はあるので、このデータを誰がどういう目的で使ってどういう効果を得るかという個々のケースを考えることがスタートライン。個人情報と思しきデータも交じってくるだろうが、個々のケースについて「Multi Stakeholder」で話し合い、社会的に容認されるDXモデルを作っていくことが重要だ。

 

 加えて昨今のサイバーリスクを考えると、セキュリティをどう担保するかも課題として残る。これらを総合的に考えて進めるのが、真のDX推進者でしょう。熱意ある皆さんに期待します。