Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

真のDXを求めて(前編)

 DX(デジタルトランスフォーメーション)によって企業の構造改革を計り、生産性を向上させ、国際競争に生き残れるようにする・・・このスローガンは間違っていない。日本の労働力は量的には減少するし、質的向上も人間だけでは限界がある。米国企業を中心にDXを成し遂げた企業は時価総額を上げ、そうでない企業は長期低迷もしくは消滅の危機にあるのも事実だ。

 

 だからDXと霞ヶ関(特に経済産業省)は掛け声をヒートアップさせる。DXってどうすること?と時々聞かれる。流通業界POS入れたよね、銀行はATM入れたよね、そういうこと?と聞かれるので、僕は、合理化だけでは十分なDXとは言えず、現場などがデジタル化することによって得られたデータをいかに使うかがポイント、つまり、

 

◆真のDXとは新しい(デジタル)データの活用を行うこと

 

 と答えるようにしている。POSは会計の窓口業務を合理化するだけでなく、Point of Salesの現場で起きていることが瞬時に本部に伝わり、それがずっと蓄積されることに意味がある。どこでいつ何が売れたか、昨日よりこれが売れたのはなぜか、ずっと売れずに棚の飾り物になっているのは何か・・・さらに買ってくれた人の属性(例:20歳代の女性)や当日の天候、あるいはイベントなどのファクターと掛け算すれば販売傾向のナレッジに収斂できる。

 

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 ATMでもそうだ。Automated Teller Machineとして金銭出納の業務を合理化するだけが、その役割ではない。街中に散っているATMで、いつどのくらいの出金/入金があったかも瞬時に本部で把握できる。そしてATMに残っている紙幣の枚数も。ここで考えたいのは「資金予測」だ。

 

 いつどこでどのくらいの出金があるか、入金があるかを予測できればATMの中に用意しておく「準備金」を最適化(要するにぎりぎりまで減らすこと)できる。減らしてどうするのか?捻出したお金は投資なり貸し付けに廻せるから稼いでくれるのだ。ATMの中の「準備金」は死に金だから、減らしたいのが当たり前である。

 

 40年前からあるこのビジネスモデル、いずれも現場の売り上げ状況やATM内の紙幣の量というデータを活用してDXしたものである。これらの古い例を挙げて、僕は「新しいデータ活用を考えましょう。ついでに合理化できたらいいくらいのつもりで」と勧めている。

 

<続く>