Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

セキュリティイベント2.0

 このところ、サイバーセキュリティ関連のイベントが多い。10年前は非常にマイナーな、一部の専門家だけが肩寄せ合ってお互いの不運を慰め合うような業界だったが、デジタル業界の中でちゃんとした地歩ができつつあると感じる。

 

 日本では2017年の「WannaCry」事件以降目立った被害は報告されていないが、水面下では被害者も気づかないものも含めて、事件は着実に増えていると専門家は言う。政府の関係機関(内閣官房総務省経産省)は「サイバーセキュリティ対策は未来への投資」といい、経団連は「サイバーセキュリティは経営課題」と繰り返す。こららのことに間違いはないのだが、企業としては「じゃ、どうすりゃいいのさ」と困っているのも事実だ。

 

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 この日六本木の会場では、上記3府省が挨拶し経団連は基調講演をするイベントがあった。聴衆は、100名は越えていただろう。発起人には産業界や学界の著名人30人以上が名を連ねていた。主催者代表で開会の辞を述べた先生は、学界の重鎮の方。以上のことはいいのだが、スポンサーはほぼ全部狭義のセキュリティ産業で、デモ展示も行われていた。

 

 イベントにはお金がかかるので、発起人や主催をしている団体だけでは賄えない。しかし「売らんかな」の企業からお金を出してもらえば、売り物が前面に出てくるイベントになるのはやむを得ない。スポンサー企業にしてみれば、自社だけでは集客できない聴衆を著名人の人脈や名声で集めてもらえるメリットがある。

 

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 ま、サイバーセキュリティに関する全体の気運が高まるためには、こういうイベントも必要だなと思って会場を後にした。実は、もう1件イベントが控えているのだ。次の場所は大手町、ある大手コンサル&監査法人が単独で開催するものだ。

 

 ここでも、聴衆は100名あまりだろうか。壇上では、主催企業の専門家とその顧客企業のセキュリティ責任者とおぼしき人が対談をしている。内容は、顧客企業が被害に遭った/遭いそうになった事例の紹介だ。企業はどんな備えをしていたのか、どんな攻撃にあったのか、その時の組織としてまたは個人としての対応はどうだったのかが、率直に語られていた。

 

 企業のサイバーセキュリティ関連部署の人が多いだろう聴衆の、一番聴きたいのはそういう事例だ。この大手コンサル&監査法人は、直截的なソリューションや製品を売り込むのではなく顧客企業の事例を広めることで、市場の拡大を間接的にしようとしているわけだ。こういうのを「イベント2.0」というのでしょうか。脱皮できた企画に「いいね」をあげたいです。