Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

海運業界のデジタル活用

 もう10年ほど前の話だが、総務省主催で各業界の「データ活用」を紹介するシンポジウムがあった。そのしばらく前に「ビッグデータ」というバズワードが世界を流れたが、この会に出ていた人たちは「データは多ければいいというものではない。どう使って価値を生み出せるかだ」という真実をちゃんと理解していた。今でいうプラットフォーマーが多くの(個人)データを囲い込んでいるとやっかみばかり言っている業界人とは違う人たちだった。

 

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 その中でも「日本郵船」のプレゼンに、僕は一番感動した。世界の海を移動しているコンテナのデータは、3つの大きな海運グループで共有できていると聞いた。業界のコンペチタと商品情報を共有する・・・と言うのは衝撃的なことだった。だからこの業界は、デジタルトランスフォーメーションの優等生だと思っていたのだ。

 

https://www.tokyo.thedigitalship.com/

 

 今回縁があって、海運ビルのクラブで開催される業界のイベント「Digital Ship Maritime CIO Forum 2019」の案内状をもらった。このイベントは、衛星通信の事業者や運行管理ソリューションなどのベンダーがスポンサーとなっている。聴衆は海運会社のほか造船会社や関連企業もいる。午前中の業界としてどういうデジタルトランスフォーメーションをしていくかというテーマを考えさせる講演の後、午後はいくつかのソリューションの紹介や、造船現場の(IoT含む)デジタル活用の紹介、サイバーセキュリティの話が続いた。

 

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 それらの内容には興味深いものもあり主催者の設定に異論はないのだが、どうも全体の印象が薄い。デジタル活用のレベルが基本的なものにとどまっているのは、聴衆が大企業ばかりではないからだと思っていたが、それにしても会場から質問一つでない。例えばパネルのモデレータが、結構きわどい話をパネリストに振るのだがそれによって会場から手が挙がるということもなかった。

 

 また陸(上輸送)と海の話を必要以上に分けて考え、比較しているのも気になった。荷物を運んでもらう企業から見れば、陸も海も(空も)関係ない。要はそのものが時間・コストが適切におさまって、相手に届けばいいのだ。Transport as a serviceである。

 

 業界に詳しくないので軽々と結論は出せないのだが、10年前とは全く違う手ごたえだった。この業界の話、もう少し勉強したいですね。デジタル屋が手伝えること、いろいろありそうです。