Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

量子コンピュータのインパクト

 Google量子コンピュータの試作に成功したとの記事があった。01で成り立っている「ノイマン型コンピュータ」と異なり、00011011の組み合わせで計算をすると聞いている。特徴はそのスピードで、従来型のスーパーコンピュータで1万年かかる計算を3分そこそこでできるという。ざっと16億倍、幅を見て10億倍〜20億倍くらいの見当だろう。

 

 驚異的な数字にも見えるが、コンピュータの演算性能は数年で一桁上がってきている。しばらく前に調べたところ、最初の近代的なコンピュータENIAC1946年)に比べてiPhone62014年)は4億倍の計算性能を持っていた。加えて、その設置面積は2万分の1である。そのくらいの性能向上はありうると思っていただきたい。

 

 もちろん今回の試作機が近い将来実用化されるのは難しいだろうし、IBMその他の技術陣が「本当にできたのか、動いたのか」と疑問を投げていることも確かだ。それでも「もし出来ていたら・・・」のインパクトはかなりある。単純な計算を早くやるというだけではなく、いろいろな組み合わせを試してみて「カギを開ける」ようなことは瞬く間にできるということになる。

 

 IDもパスワードもいろいろな組み合わせをWebサイトにたたきつけ続ければ、いまでも不正アクセスはできる。パスワードが当たる確率は小さくても、「0.1%でも可能性があれば、失敗は必ず起きる」のである。昔の映画でいくつもの鍵束をもって空き巣がドアを開けるシーンや、4ケタの暗証番号も1万回試せば必ずあたるという話と似ている。それでは、量子コンピュータという兵器をもった相手に対してはもう秘密は持てないのかというと、対策もないわけではない。

 

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 かつて「量子暗号」と呼ばれた構想があった。無理に開けようとすると壊れてしまって内部の情報が失われるというもの。壊れたら使えないじゃないか、というのが物質文明の発想である。情報文明の見地に立てば、暗号化された情報は無限にコピー可能でどこにでも存在する。

 

 法律的に言えば所有権は存在せず、利用権だけがある。利用権のある主体だけが安全に暗号を開いて情報を得ることができるというわけ。今は「耐量子暗号」という名前で研究が進んでいるのですが、僕が生きているうちに実際に使われるようになるかはよくわかりません。