先週、日経新聞が「分岐点の中国~共産党100年~」という特集記事を組んだ。「改革開放」路線から、「毛沢東主義の統制」へと方針が変わったという。確かに「国退民進」から「国進民退」への転換は起こっていて、巨大IT産業への規制強化や、解体の噂も流れてくる。
アリババ創業者ジャック・マー氏へのSNS上での風当たりの強さを見ると、デジタル紅衛兵の登場かとも思わせる。日経によると、マー氏が創設したビジネススクール「湖畔大学」の新規募集が打ち切られたという。これまで中国のGDP成長を支えてきたイノベーション力が、今後も維持できるかは不透明(僕は真っ暗と思う)である。
一方で次世代の技術と言われる「量子技術」には、すでに700億円を投資していて、米国との経済成長競争を、
・米国は自由を源泉に
・中国は国家主導で
闘うことになるらしい。以前読んだ中国関係の書籍によれば、近年の中国のGDP成長の多くは投資によるものだとのことだった。GDPの算出方法は、
GDP=消費(C)+投資(I)+政府支出(G)+純輸出(NX)
であるから、I&Gを出せばその時点でのGDPは増える。中国にはGDPを10%かそれに近い数値を出すとの目標があり、地方政府もI&Gを増やして自分のGDPを増す。GDPが高いと幹部が出世するので、多少の水増しは当たり前だ。その足し合わせたものが中国全体のGDPなのだから、その数値が信じられないとする意見もある。
中国の人口はまだ4億人 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
今でこそ「量子技術」などだが、かつての「5Gに1兆円」というのも、GDP上げ目的の「投資」だったはず。中央統制でGDPを上げ、米国を追い越そうとするのだが、うまくいくのだろうか?というのは、世界中で「GDPって、本当に意味ある指標なの?」という疑問が巻き起こっているからだ。
以前「資本主義の終焉と歴史の危機」を紹介した経済学者の水野和夫氏(現在は法政大学教授)らは、「GDPは賞味期限切れ」と仰る。経済成長途上にあっては意味はあったのだろうが、成長期を過ぎた社会(日本も中国も)にとっては、いかにカネを稼ぐかよりもいかに幸福に暮らすかが重要で、後者の指標が必要だとのこと。
GDPを追求して「K字回復」しても、格差は広がるばかり。かといって今の中国に、GDP以外の指標を受け入れる余地はないかもしれませんね。