先週、10年ぶりくらいに日本IBMの本社を訪れることになった。言うまでもなく、世界のコンピュータの歴史を担った企業である。僕が学生だった頃、この会社は世界一のコンピュータメーカーだった。ミニコンの雄DECとか、バローズ・ユニバックなどの競合企業はあり、日本でも当時の通産省の政策によって富士通と日立がIBM互換機を、NECらが独自機を開発して市場に供給していた。
僕の大学院生時代のコンピューターセンターには、富士通の大型機(メインフレーム)があり、研究室で使っていたのは日立の古いミニコンだった。就職してからの一時期、マーケティングを担当していたころに、巨人IBMが新興ベンチャーであるMicrosoftと提携、経営不振だったIntelに出資するという「事件」が起きた。
当時急成長していたAppleへの対抗と言われ、「ガレージメーカーとの闘いは自らガレージメーカーになること」と言って、メインフレーム常識をかなぐり捨てた社内ベンチャー「Entry Systems Division」でPCの開発・販売を始めたのである。
それから20年、ICT政策に関わるようになって日本IBMの渉外部門の人たちとの交流もできて、箱崎にあるこの建物を何度か訪れている。その後少し間が空いたが、今回は米国本社から政策担当役員が来日する機会にラウンドテーブル会合をしたいということで呼んでもらった。
最寄り駅は水天宮だが、僕のオフィスからは茅場町駅経由が便利。永代通りから箱崎までゆっくり歩いて7~8分。30階ほどの高さの巨大なビルが見えてきた。ずいぶん昔からある古いビルだが、若い頃に見た威圧感はそのままである。付近に並び立つ巨大ビルがないせいもあるだろう。