Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

春花園BONSAI美術館(後編)

 僕は松のケアをしたことは全くないが、松より成長が早いサツキツツジは剪定や植え替えの経験もある。枝は切り落としてもまた生えてくるので、枝ぶりというのは後から変更が効く。しかし根張りはそうはいかないから、盆栽の特に若木を見るポイントは根元にある。「真如の月」15万円はすごいな・・・と思いながらも、その立派な根元を見てそのくらいの値打ちはあるのかもしれないと思いなおした。

 

 松は「懸崖造り」も多い。鉢から下に幹や枝が垂れ下がるように仕立てるのがこれ。ワイヤーで捻じ曲げたり、上に伸びようとする枝を刈り込んで地面に近く、根元より低いところに枝を茂らせる(サツキツツジであれば花を咲かせる)ものだ。また、幹が一部枯死しているものも多い。その部分は白くなっているのだが、これもアクセントになって変化を付けられる。

 

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 庭の池には、これも立派な錦鯉が一杯飼われている。普通ならこれにしばらく見入るところだが、盆栽の方に注意が行ってしまっている。古民家と思えた建物は、どうも盆栽のショールームのようだ。床の間が何部屋も並んでいるので、それに気づいた。それに床の間が、縁側の方に向いている日本家屋というのはあまり見かけない。

 

 一つの床の間に掛け軸などの絵画と盆栽をセットにしてある。庭先から見ていると美術館の人が、「どうぞ上がって室内から鑑賞してください」と勧めてくれた。礼を言って、10部屋弱ある「床の間セット」を順番に拝見した。ワビ・サビを基本にする日本芸術の一派は、華美なものを嫌う。いわゆる「幽玄の世界」を屋敷の中心たる「床の間」に置くのに、墨絵と松の盆栽というのは有力なものである。

 

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 僕ら夫婦のほかにも何組か見学者がいて、中には外国人もいた。昨年の日経の記事ではここは外国人にも「BONSAI」を教えているとあった。入り口にあった多くの国旗のように館主は外国にも「BONSAI」の出張講義に出かけるという。もちろん国内でも若い職人の教育に力を入れていると、説明された。

 

 懐かしい「盆栽」というものが、立派な美術館になっていて外国人も訪ねてくるというのには感激した。小林館主はじめ美術館を維持している皆さんに、敬意を表します。