Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

データ標準化で進化する「バスロケ」

 僕自身、国内ではバスを利用する機会はほとんどないから感じていないのだが、「バスロケーション表示」も相当進んできていると思う。パリのリヨン駅前とド=ゴール空港を結ぶシャトルバスでは、後何分で来ますよという表示が液晶ディスプレィに出る。もうちょっと大きく明るくしてくれれば嬉しいが、贅沢は言うまい。東京都内のバス停で、xx域は後どのくらいで来るかの表示も見た記憶がある。さらには利用者のスマホで見ることのできる「バスロケ」もあるようで、これならバス停まで行かなくても異動計画が立てられる。

 ただこういうサービスは、どうしても大手事業者、大都市圏に限られる。デジタル化のためのリソース(もっぱら人)がなく、初期コスト負担に耐えられない中小事業者は置き去りになっている。本来は運行本数の少ない地方路線のほうが、利用者ひとりひとりとしては「バスロケ」リアルタイム情報へのニーズは強いはずだが、利用者そのものが少ないせいもあって実現できているところは少ない。

 基本的なバスの停留所の位置、路線図、時刻表、運賃などのデータに関しては、乗り換え案内サイトなどバス事業者以外の事業者もサービスを提供している。中小事業者もこういうサイトにデータを載せられれば、利用者に情報提供は可能だ。ただ各バス事業者がバラバラのフォーマットで送ってきたりすると、サイト運営業者はお手挙げなってしまう。

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 かつては、時刻表をデジタルデータでもらったのはいいけれど、PDFだったという笑えない話もあった。一方、サービスサイトも1種類ではないので各サイトがこのフォーマットで書いてくれと言ってくると、バス事業者の方が困ってしまう。そこで「標準的なバス情報フォーマット」が求められる。先日国交省の人と話をしていて、大学と共同してGTFS(General Transit Feed Specification)形式にフォーマットを合わせさせ、バス事業者もサービスサイトもこのフォーマットによってデータ交換をすることに成功したと聞いた。

 

 このフォーマット欧米ではいくらか実績があって、停留所の位置、路線図、時刻表、運賃などの静的データについては昨年度までに、地縁、到着予測、車両位置、運行情報などの動的データについても今年度から使えるようにするとのこと。すでに全国90社のコミュニティバスを含むバス会社が採用しているそうだ。中小個社ではできないデジタルデータ流通活用も、標準化することで実現できる。他の業界でも参考になるような、画期的な成果だと思います。

イル・ド・バカンス号

 富士急行は熱海・初島間に、定期便を1日9往復就航させている。初島は、伊豆半島の東に浮かぶ静岡県唯一の有人島である。ちなみに伊豆大島は、名前と異なり東京都に所属している。初島の人口は250人弱、水を始めとする資源の制限からか住民登録には制限があって、これ以上にならないようにしているらしい。近いけれども「離島」であり、選挙投票日は「内地」より1日早くなるという。

 
 熱海の街から南東に10kmくらいのところにあり、周囲4kmの円形テーブルのような島だ。南国の風情があるリゾートである上警護がしやすいという理由で、かつて橋本・エリツィン会談が行われたところでもある。

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 熱海港は熱海駅からバスで10分くらい。下り坂なので歩いて行っても、30分くらいで着く。登りは結構つらいから、自信のない人はバスがおすすめ。熱海港周辺では、釣りをしている人も多い。釣れるのかね?釣っていいのかね?・・・などと思いながら埠頭へ行くと、富士急行のフェリーが多い時には2隻停泊している。そのほか伊豆大島などへ行く、東海汽船の水中翼船「セブンアイランド号」が泊まっているいることもある。
 
 見る人によっては「ケバイ」カラーリングの水中翼船とは違い、富士急行初島フェリーは白もしくは白とオレンジを基調とした落ち着いたものだ。上の画像は、2014年に就航した新鋭船「イル・ド・バカンス・プレミア号」である。2階建てのように見えるが、頂部甲板、船橋甲板、上甲板、上甲板下の4層構造。
 
◆イル・ド・バカンス・プレミア
 ・全長43.0m、幅8.6m、総トン数271t
 ・最大速力 16ノット(約30km/h)、定員は605名
 ・三菱重工

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 「プレミア号」と共に現在の9往復を担っているのは、もう1隻いる「イル・ド・バカンス3世号」。いずれも25分ほどで、熱海港と初島を結んでいる。「プレミア号」就航以前には、「イル・ド・バカンス2世号」という少し古めかしいフェリー船と「3世号」との2隻体制だったが、今は「2世号」を見ることが無くなった。「2世号」というからには、僕も見たことがない「1世号」もいたのだろう。この2隻、どこかで余生を送っているのだろうか?僕がミャンマーの街中で見た、京王バス神奈中バスの車両のように。

フライト上の英会話教室

 先月の海外出張も2度あった。まあ、片方が近い台湾だったことが救いだが、中2日というクルーさんでもないような連続出張は結構こたえる。長いフライトの間、飲んで食ってばかりではもたない。眠るのも、欧米路線なら4時間も眠れればラッキーだと思わないといけない。空いた時間は機内エンターティンメントのお世話になるわけだ。

 

 先月は見たいと思う映画はあまりなかった。「七つの会議」はそこそこ面白かったが、日本の企業の現場を思い出してちょっと気分が暗くなった。映画がなくても青い日系航空会社のフライトで僕が必ず見るのが、「NCIS」と「Hawaii 5-O」というアメリカのTVドラマ。特に「NCIS:ネイビー犯罪捜査班」はいつも40分くらいのドラマが3本用意されているので、往復とも見ることが多い。

 

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 海兵隊で狙撃手でもあったギブス捜査官の指揮の元、ユニークな捜査官・分析官・検視官たちが繰り広げる物語はとても面白い。「0011ナポレオン・ソロ」に相棒役で出演していたデビット・マッカラムが、ベテラン検視官役で出ているのも楽しい。

 

 時々軍艦や海軍施設の中がのぞけるのもうれしいし、なによりこれから行くことになるワシントンDCが舞台だ。「1700, M-street」などと言われるとイメージできることもある。勉強になることもあって今回見た話の中には、自動車のOBD(On-board diagnostics)端子にツールを付けて事故を起こさせるエピソードがあった。これは数年前から専門家の間では危惧されていたことだ。

 

 3カ月間は同じ3本が上映されるので同じ物語を何度も何度も見ることになるのだが、そのおかげで、登場人物のセリフが少しずつ聞き取れるようになってくるのがいい。英語をただ聞き流しているだけで英語力が増すという宣伝文句を聞いたことがあるが、映像含めて一生懸命見聞きしているのだからそれよりは効果があるだろう。

 

 そんなわけで、いい年して英語力が少しは向上していることはいいのだが、問題が一つ。犯罪・戦争関係の単語ばかり覚えてしまうので、経済や技術の話をしていてもついそういう単語が出てしまうこと。けげんな顔をされて気づき、「戦争ゲームヲタクなので」と言い訳する羽目になる。ま、それでもこの3本を見る習慣はやめないでしょうけどね。

個人情報のお値段

 3年ほど前に個人情報保護法の改正をした日本では、個人情報の利用と保護のバランスを社会全体で考えていくために「第三者委員会」として個人情報保護委員会が発足、活動を活発化している。そういうこともあって、個人情報保護に大変意識の高い欧州委員会と日本政府の間で昨年交わされた「日欧EPA」の中にお互いの個人情報保護のありかたを認め、両者間でその流通が可能になった。

 
 ただどのように企業が意識を高め、そのために従業員教育をし、サイバーセキュリティ等の投資をしても「絶対」はない。個人情報が洩れて、お客様に迷惑をかけてしまうことはあり得る。そうなった時は、お詫びをし再発防止策を公表し、最終的には迷惑をかけた方に補償をすることになる。
 

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 さて問題のひとつはその「補償」である。個人情報の漏えい事件は最近ほど件数が多くないだけで昔からあり、何らかの形での補償をしたケースは一杯ある。例えばクオカードやテレホンカードを送るとか、わび状を添えた粗品を送るとかはよくあることだった。ではいくらくらいのものを送って補償すればいいか、300~500円くらいが相場だったような気もする。法令規定ではなくあくまで気持ちなので、金額を決める根拠は何もない。それが2014年に起きたベネッセの個人情報漏えい事件では、1人あたり3,000円+弁護士費用300円の合計3,300円が保証されるべきとの判決が、昨年末に出ている。
 
 すでに同社は500円程度のお詫びはしており、加えて3,300円+支払いのための必要経費を支出することになる(もちろん控訴は可能だ)。流出件数は3,500万件といわれるから、ざっと1,200億円以上の損害となるだろう。原告側は一人当たり5万円以上の補償を求めていたようだから、その場合は1兆円を超えてしまう。それに比べればマシではあるが。
 
 今回の判決は、補償額を一桁押し上げた。もちろん子供たちの情報だったので老人よりは将来不安がより大きいという理屈はあるかもしれない。それにしても、今後この額は多くの裁判等の参考値になる。経営リスクとして設定している数値を、改定する企業が増えるでしょうね。

豆相人車鉄道

 近代的なビルに建て替わって見違えるようになり、大規模商業施設ラスカとなった熱海駅だが、駅前広場も同時に整備された。そこにぽつんと、オモチャのような蒸気機関車が展示されている。煙突も窯も、石炭の投入口もあるのだが、あまりにも小さい。操作デッキには、大人2人が乗れるかどうかわからないくらいだ。

 

 この機関車、かつては実際に稼働して乗客を運んでいたのだ。いまはかくも幅の狭い線路は存在していない。その路線は、1907年から1924年まで小田原・熱海間を結んでいた。現存する機関車はその7号機関車だということだ。これは軽便鉄道なのだが、実はそれ以前にもこの路線に列車(・・・と言えないかもしれないが)が乗客を運んでいた。

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 それが豆相人車鉄道、熱海駅から熱海銀座の方に降りてゆく途中に「大江戸温泉」があるが、その入り口に碑が残っている。この旅館はかつて「南明ホテル」という老舗だった。軌道の終点がここだったと碑にあるから、昔は駅前旅館だったわけだ。僕もまだ熱海に移り住む前に、両親を連れて宿泊したことがある。古い旅館で比較的安い料金だった。食事などはお値段相当だったが、食器などの調度は立派だと母親が評していた。今は、経営困難になった旅館をリノベーションして店舗を増やしている「大江戸温泉」のひとつになってしまったというわけだ。

 

 さてその碑によると、最初は人車なので機関車は付いていない。馬車は馬が客車を曳くのだが、人車は人が客車を押すわけだ。その後蒸気機関車が付いてからも急坂に差し掛かると、上等・中等・下等の区別があった(料金が違う)下等の乗客は降りて車両を押す側に廻ったという。丹那トンネル開通までの熱海周辺の鉄道には、本当にいろいろなエピソードがありましたね。