Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

DXの戦術・作戦・戦略(後編)

 IPAのDX認定制度申請チェックシートを基に、DXの作戦級のポイントを見てみよう。

 

1)企業経営の方向性、ICT活用の方向性を決める。

2)それらの具合的な方策を決める。

3)その達成状況に係る指標を決める。

4)実務執行総括責任者から必要な情報発信をする。

5)実務執行総括責任者が利用するICTの課題を把握する。

6)サイバーセキュリティに関する対策が的確に策定・実施される。

 

 ということが書いてある。多くは「当然だろう」と思うのだが、それが意外にできていないこともある。改めてIPAのチェックリストを前に考えるというのも、いい気づきになっていることだろう。

 

 注意すべきなのは、これがIT部門だけに閉じた話ではないこと。「企業経営の方向性」と言われても、多くの企業のCIO/CISOは応えられないのではないだろうか。もし前編で述べたように、日本企業のDXが欧米企業に遅れているというなら、その一因はここにある。GAFAなどはもちろんのこと僕の知っている外資系企業では、CIO/CISOは経営会議の常任(さらに重要)メンバーだ。企業経営の方向性は熟知しているし、ICT活用の方向性との合致に最新の注意を払う。時には、経営の方向性を変える提案もするだろう。

 

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 戦術・作戦の議論が収まったところで、僕は戦略論を持ち出してみた。ICT活用はあくまで手段、企業としての戦略目標は生き残ること、儲けることである。企業の戦略論を読むと精々作戦級のプランが並んでいて、ひどいのになると戦術級の寄せ集めのようなものもある。だからこの際真の「DX戦略」の議論をしておきたかった。

 

 DXであろうがなかろうが儲かればいいのだから、この事業は何をするのかが揺らぐようでは困る。それが定まれば、そのためのコストとその効果(付加価値でも売り上げでもいい)の見合いである。コストを劇的に下げたり効果を劇的に高めたりするために、デジタルデータを使うことが僕は戦略レベルの話だと思っている。

 

 役立つデータはどこにあるか、どうすれば手に入るか・・・はそろそろ作戦級に落ちてきた話。いままで何度かご紹介したように、デジタル化が進んだ社会には「役立つデータ」が眠っている公算が高い。

 

 企業戦略の中心に(画期的な)データ活用を据えること、これが僕は「真のDX」だと思いますね。