Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

主人公の弱点

 劇画原作者の小池一夫さんが亡くなった。享年82歳。さいとうプロでストーリーライターをした後独立、「子連れ狼」や「クライング・フリーマン」など多くの原作品を発表した。特に「子連れ狼」はTVドラマ化もされ、「刺客・拝一刀」を演じた萬屋錦之助の迫力ある演技は印象深かった。拝一刀は暗殺者なので、ターゲットへのアプローチの仕方はさいとうプロのころ担当しただろう「ゴルゴ13」と一脈通じるものがあった。

 

 伝えられるところでは原作のデザインにあたって「主人公には弱点を、悪役には欠点を設定する」のがコツと言っておられたようだ。特にシリーズものの主人公デザインにあたって弱点の設定というのは魅力的な話だ。読者は弱点があるからこそ主人公に肩入れし、サスペンスも盛り上がるわけだ。

    f:id:nicky-akira:20190421081847j:plain

 

 「子連れ狼」では、剣をとらせれば無敵の一刀も、子供を人質に取られたら窮してしまう。「ゴルゴ13」のデューク東郷も神技とも思える狙撃をみせるものの、初期のうちはギランバレー症候群によって不定期に右手が効かなくなる。これを僕の知っているミステリーの主人公にあてはめると、

 

 ★プリンス・マルコ 護身用以外の武器は持たず、格闘に優れているわけでもない。

 ★リンカーン・ライム 首から下がマヒしていて、ベッドから離れられない。

 ★スペンサー 恋人スーザンがいないと腑抜け状態。

 ★フィリップ・マーロウ 独特の矜持があって、あえて不利なことも選ぶ。

 ★ジャック・ライアン 妻キャシーや子供たちを溺愛している。

 

 くらいだろうか?「ステルス艦カニンガム」のギャレット艦長や「砂漠の標的」のマクシム少佐には明確な弱点は見当たらないから、シリーズものの主人公に弱点が必須というわけでもなさそうだ。

 

 もうひとつ「悪役の欠点」という言葉の例はなかなか思いつかない。一般に悪役がシリーズ化されることが少ないこともあるだろう。モリアーティ教授の欠点、と聞かれてもよくわからない。まあ、87分書シリーズの好敵手「デフ・マン」はろうあ者だが・・・。