Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

動力炉・核燃料開発事業団

 先月、経団連がエネルギー政策についての提言を公表した。再生可能エネルギーの利用拡大は進めるとしながらも、原子力についてはこれを使うべきとしている。例えば廃炉まで40年というのが定説だが、非稼働時間はそのカウントから除くべきだという。僕自身は原子力政策についての知見はゼロなのでコメントできる話ではないが、ひょっとしたら今頃デジタル政策でなく、原子力政策にかかわっていたかもしれない。

 
 大学院2年の夏、就職活動をしていた僕は「動力炉・核燃料開発事業団」を受験する手続きを取っている。当時の工学系研究室は、教授の意向で就職先がおおむね決まる。企業と教授の関係が、今より深い時代だった。
 
(1)教授はあらかじめ学生の希望を聞いておく。僕には3社書きなさいと言われた。
(2)企業側から求人が大学に来る。まあ大体昨年と一緒ということが多い。
(3)大勢採用する企業もあるが、主任教授はじめ教授陣は急激な変動を嫌う。
  大体前年と同じ様な振り分けをする。
(4)企業の求人と、学生の希望がマッチしないところには教授陣の調整が入る。
(5)普通、就職希望の学生には「教授推薦状」が渡され、それが受験の入場券。
 
 昨今のように、教授推薦があってもバタバタ不採用になる時代ではない。それでも、大学院の同級生のうち何人かは不採用になることがある。そうなると、ちょっと慌しくなる。二つ目の教授推薦はもらえるのか?今から博士課程に進学する道はあるか?教授推薦ヌキでどこかの企業にアプローチするか?
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 僕は不採用になってから慌てないように、教授推薦の受験の前にもう1社受験準備をしておいた。教授には内緒である。教授に出した希望はIT系の3社、これにかぶるような選択はできない。勉強熱心な学生であったなら、公務員試験という選択肢もあったかもしれないが、なにせ怠け者なのでこれは無理。
 
 コンピュータのヘビーユーザ企業を並べてみたが、お堅い金融系は性に合わない。鉄や自動車のようなカナモノ産業の現場も、あまり好きではない。流通などサービス業は本格的コンピュータ導入はこれからだし、同じサービスでも交通・電力といった社会インフラ系は他の学生が教授推薦で受験する。
 
 そこで目をつけたのが「動力炉・核燃料開発事業団」。シミュレータなど膨大なIT資源を必要としているし、毎日の売り上げ・利益で追いまくられることもなさそうだ。そこで会社説明会に行き、受験準備をして教授推薦の企業の採用通知を待った。結局この事業団を受験する必要は無くなったのだが、少しは思い入れのあるところ(現在の名称は日本原子力研究開発機構)である。人生のIFの選択肢のもう一方は、知ることができない。そんな思いで、経団連の提言を聞いた。