Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

給付付き税額控除への長い道

 すでに辞任表明をしてしまった石破総理だが、次の体制が決まるまで内閣は機能している。国会討論で、立憲民主党野田代表から「現金給付から給付付き税額控除への議論」をしようと持ち掛けられ、それを受諾している。自公に立民が加わって議論が始まり、僕には無理と思えていたこの制度が、急にリアリティを帯びてきた(*1)。自民党総裁選でも、高市候補がこの制度を公約するとしている。

 

 所得に対する課税額を超える控除額がある場合、現行では余った控除額は無視されてしまうが、給付付き税額控除だと、余った控除額分が給付される(*2)。低所得者への恩恵が増すわけだ。

 

函館市役所正面

 しかし実現にはいくつもの問題がある。

 

1)不正受給の防止

 所得が正確に把握できなければ、過少申告することで脱税したり、不正に給付を受ける者が出てくる。また、扶養親族を偽るケースも考えられる。

 

2)世帯単位の所得の算定

 個人単位ではなく世帯単位とするのが一般的だが、同一世帯内で(偽装)分離して優遇を受ける者も出てくる。

 

3)資産性所得の扱い

 現在源泉分離課税となっている金融所得(*3)をどうするか?合算しなければ不公平との意見もあるし、合算すれば源泉分離制度が瓦解する。暗号資産も源泉分離にしようという動きもあるのに・・・。

 

 加えて、国税関連機関は所得税非課税対象者のデータを持っていないため、行政内部で新たな情報入手や共有の仕組みを作る必要がある。納税者(というより全国民)が全ての所得を当局に把握されないと、上記の不正が防げない。マイナンバーですべてのカネの流れを当局が抑えるという事態に、納税者が納得するだろうか?

 

 税は国家の根幹、透明・簡素・公平な制度であるべきだが、給付付き税額控除への転換は、大きな政治的エネルギーを必要とするように思います。低所得者への支援を急ぐのであれば、Basic Income(BI)の方が手っ取り早いと思うのですが。

 

*1:自公立3党、19日に党首会談 「給付付き税額控除」協議へ:時事ドットコム

*2:【初心者向け】給付付き税額控除とは?知っておきたいポイントをわかりやすく解説 | ちょっと気になる調査局

*3:いわゆる1億円の壁問題