古来映画というメディアは、政治的なプロパガンダと表裏一体の関係にある。専制国家でなくてもある程度政府の意思は伝えられるし、非常に多くの人に影響を与えられるからだ。いくつか例を挙げると、
ニコライ王朝での水兵たちの叛乱を描いたもの、共産主義革命に正当性を与える目的
■1942年日本「空の神兵」
パレンバン攻略の落下傘部隊の活躍を描いたもの、戦意高揚が目的
■1982年米国「ET」
宇宙人はフレンドリーとの印象を与えるもの、NASAの宇宙開発を側面支援する目的
■2014年米国「インタビュー」
北朝鮮の金総書記を揶揄する内容、北朝鮮ハッカーを挑発する狙いもあったか
のようなものを覚えていた。今年はWWⅡ終結から80周年にあたり、種々のイベントが行われる。中国では9月3日が抗日戦勝記念日で、大きなイベントが企画されている。

そのタイミングに合わせて何らかの映画を製作していてもおかしくないと思っていたのだが、石井部隊の残虐行為を描いた映画が用意されていた。しかしその映画「731」が公開延期になるとの報道があった(*1)。
延期の理由として、残虐シーンが多くて子供に見せられない、夏休みはほかに大作が目白押しなどが語られるが、やはり市民の反日感情を煽りすぎることのマイナス面を習政権が考えたのだろう。
プロパガンダ映画の弱点の一つが、企画から公開まである程度の時間が必要なこと。この映画に関しては、米中対立の中で日本は米国の(確固とした)同盟国だったころに企画され、日米関係が関税砲などで揺らぎ始めた今公開できるようになったタイムラグ問題である。むろん満州731部隊の暴挙については、日本人と言えど容認できるものではない(*2)。しかし、その歴史をどう使うかは関係国政府の意思に基づくとして、その影響についてはある程度当該政府の責任が問われよう。
抗日戦勝記念日に向けた公開は諦めるとしても、お蔵入りにはできないでしょう。一番対日ショックの小さいタイミングでの公開を考えているかもしれませんね。