米中両国とも<デカップリング>は望んでいない・・・当たり前のことを確認するのに、1ヵ月以上かかった。とりあえず125~145%かかっていた、米中間の関税は引き下げられることになった。トランプ先生は外交・政治リテラシーは全く無いか、無いようにふるまっている。
それゆえ、彼なりの経済合理性で政策を決めている。関税はその最大の武器で、高関税で脅せばたいていの相手は屈服すると考えているのだ。典型的だったのは、まだ選挙期間中の「中国が台湾侵攻すれば、関税600%だ」との発言。正直唖然とした。
国際社会&経済には、経済合理性で測れないことがある。「99.9%のことは経済合理性で決まるが、0.1%はそうではない」と軍事専門家が言っている(*1)。この感覚を持たないから<トランプ手法>がまかり通るわけだ。

さて、米中対立になって、多くの企業が生産拠点をインドなどに移している。中国生産がメインだった<Apple>も、インド移転を始めた。そのインドも当然<トランプ関税砲>の標的で、モディ首相がどう対応するか注目されていた。その答えは報復関税だった(*2)。その上で、関税ゼロ化を提案している。
気になったのは、報復関税発表のタイミングである。5/12というのは、インド・パキスタンの停戦合意が成った(5/10)直後だ。停戦合意はいいことなのだが、インド側には不満が残ったとの報道もある(*3)。ずっとカシミール紛争はインド・パキスタン両国のみで解決を探ってきた。そこに米国が入り込んできたのを、不快に思ったらしい。
なるほど、モディ首相は「経済合理性のみで動くトランプ政権なら、紛争解決のツケも関税で返してやればいいのだ」と考えたのではないでしょうか。<トランプ手法>を逆手に取ったわけですね。
*1:経済合理性が通用しない部分 - 梶浦敏範【公式】ブログ