Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

正常化した市場の警告機能

 なんとか25年度予算を3月までに成立させた石破政権だが、少数与党であり夏に参議院議員選挙を控えていて、不安定な政権運営が続いている。トランプ関税砲も怖いが、台湾付近で演習する中国軍も気になる。もっと困ったのは「財務省解体!」を叫ぶ有権者である。

 

 「消費税は社会保障に必要な財源」との建前はあるが、現実の選挙の票目当てとして一時的な減税もやむを得ないかもしれない。いや、ちょっと待っていただきたい。日本国債長期金利が上昇し、国債自体の価値も下がっている。

 

日本国債が世界最大の損失を記録、日銀の金融政策正常化で金利上昇 - Bloomberg

 

 これは基本的には「黒田バズーカ」の悪影響が顕著になった結果である。財政規律を緩和し、国債を発行して日銀が丸ごと引き受ける。金利はゼロどころかマイナスなので、国債利払いもほとんど発生しないという「アベノミクス錬金術」の負債(*1)である。

 

        

 

 この記事にあるように国債の価値が5%も下がったということは、600兆円ほど持っている日銀の損失は30兆円にもなる。消費税にして12~13%ほどの金額である。加えて30年ものの長期利回りは2.5%に至ろうとしている。そこまで金利を上げないと、日銀が引き受け額を絞っているせいもあって、市場に買ってもらえないわけだ。

 

 買ってもらえないのは、日本国債がデフォルトするかもしれないと市場が(少しは)思っている証拠。英国トラス政権が財政政策を誤って吹き飛んだときのことを思い出す。まだ日本の消費税率は欧州に比べれば低いので、財政危機になれば増税余地があると市場は見ていた。しかしこのところ(与野党ともに)減税話ばかりが出てくるので、市場は警告したのだ。

 

 植田日銀がようやく金融正常化に向かってくれたおかげで、市場の正常な警告が政府や市民に届くようになりました。これでも気付いてくれなければ、もっと長期金利が上がるかもしれませんよ。申し上げておきますが、財務省と違って市場は「解体!」できませんからね。

 

PS:ちなみにトランプ先生が関税の一部実施を90日遅らせたのは、米国国債が売られたからとの説もある

 

*1:野口先生「アベノミクス」を叱る - 新城彰の本棚