20年続いたアフガン紛争では、世界最強米軍は勝利を得ることができなかった。バイデン政権が撤退を決め、子飼いのアフガニスタン政府軍に大量の武器弾薬を供与したものの、米軍撤退完了前に政府軍が崩壊してしまった。米軍は「ビンのフタ」で、フタがなくなれば中から泡(タリバン)が噴き出してしまう。
衛星国に駐留する軍隊は、米軍に限らずフタである。例えばロシアは(軍事顧問団と空軍程度だが)シリアにとって「ビンのフタ」だった。ウクライナ戦線で消耗し、北朝鮮軍まで投入してなんとか漸進(前進?)している状態。国内は人手不足で企業が悲鳴を上げているし、ルーブルは急落して経済・財政に暗雲が漂っている。
そんな状態だから、シリア方面への注意力が落ちていたのは仕方がない。加えてシリア政府に肩入れしていたレバノンの武装組織ヒズボラが、イスラエルとの戦闘で大きな痛手をこうむってしまった。

ヒズボラの後ろ盾であるイランも、イスラエルの動向に目を向けていてシリアについては油断があったようだ。その隙をついて、シリアの反政府勢力が動き出し、かつての激戦地(虐殺地?)アレッポを奪還して南下している。
アサド大統領によるシリア「掌握」の幻想が粉々に、ロシアやイランも不意を突かれる - CNN.co.jp
もちろん予兆はあって、ウクライナの特殊部隊がシリアに停戦監視名目で駐留しているロシア軍を攻撃したという事件が夏にあった(*1)。今回の反政府軍進撃に対しアサド大統領の政府軍も体勢を立て直し、ロシア軍も空爆を開始するなど反撃を始めたが、反政府勢力の士気は高く「ダマスカスを目指す」と叫んでいる。フタが外れたのではなく緩んだだけなのだが、やはり泡は噴き出した。
幸いなことに日本周辺は大きな紛争もないのだが、世界中にはフタで抑えられている泡(紛争)はいくつもある。ロシアも方々から兵力を引き上げているようだし、トランプ政権で米軍がさらに撤退するようになれば、噴き出す泡は増えてくる。
この上は、朝鮮半島と台湾海峡のフタは外さないでくださいね。お願いですから。