Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「リントナー・ペーパー」に学ぶべし

 日本をGDPで抜いて3位に躍り出たドイツだが、経済も政治も大混乱の真っ最中。再び「欧州の病人」と呼ばれそうな気配だ。政治的な混乱の原因は、やはり与党連立政権が上手くいっていないこと。何事も原理主義的なドイツ人の中で、極左とも言うべき<緑の党>が極端な環境優先政策を掲げて、ショルツ首相の社民党が引きずられる格好になっている。もうひとつの与党自民党は、穏健な経済政策を掲げているが、大きな発言権を得られていない。

 

 その自民党党首で財務相でもあったリントナー氏が、ショルツ首相が有力企業を招いた会合の裏で、やはり中堅企業らを呼んで経済政策会合を開いた。<緑の党>はいずれの会合にも呼ばれていない。リントナー党首は、以下のような内容の経済政策「リントナー・ペーパー」を提示して、事実上ショルツ首相に弓を引いた。

 

フランクフルトの金融街

1)景気回復のためには、ばら撒きでなく構造改革


2)3年間企業の負担となる規則はなくし、新しい法律や規制も作らない


3)27年を目処に連帯賦課金(*1)を全面廃止、法人税の減税、児童手当の増額


4)気候保護に関しドイツだけが掲げている極端な目標は撤廃。関連補助金を、再エネの買い取りを含め全て廃止。CCS(*2)の促進。国内のシェールガスの採掘を開始


5)労働市場再編のため、労働意欲を減退させる生活保護(*3)はやめる

 

 その結果、ショルツ首相はリントナー大臣を解任、自民党の政権離脱を招いて、政局になった。来年1月には信任投票(日本の不信任案)を経て、総選挙になるという。

 

ドイツの混乱、背景に100兆円超える資本流出-競争力喪失で経済衰退 - Bloomberg

 

 僕が注目したのは、上記の5項目の全てにおいて、産業を自国内で活性化するための施策であることです。今後、日本でもポピュリズム的政策がまかり通るかもしれませんが、このペーパーは後々まで参照にすべき内容と思います。

 

*1:東西ドイツの統一の後、旧東独の支援のために作った税金

*2:炭素回収・貯留技術

*3:働ける人も貰える潤沢な市民金など