潜水艦は隠密性が命。いるかいないか分からないのが相手にとって最大の脅威だが、一旦発見されてしまえば、これほどもろい艦種もない(*1)。隠密(単独)行動が基本なので、その最期は記録にも残らないことが多い。WWⅡで連合国側は60席余りの潜水艦を失ったが、その沈没の状況は推測によるものが多かった。そのことは、現代でも同じだ。
このところ、南シナ海/東シナ海で中国海軍の潜水艦の活動が活発化している。2023年には、
中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
との記事もあるし、2021年には米軍最強の原潜<コネチカット>が、中国の潜水艦と海戦したのではないかと思わせる(*2)こともあった。

いずれにせよ、確たる情報は出てこないのが潜水艦の動静。ところが先月末、米国国防総省が、武漢造船所の埠頭近くで新鋭潜水艦が沈んだと発表した(*3)。5~6月ごろのことで、恐らくは事実だろうが、それをなぜ今発表したかに興味がわく。
この種のことは、米国の情報網の精度を推測させるので、何らかのメリットがないと発表しないものだ。そのメリットは何か?それは、中国軍に対して「お前の能力はこの程度だと分かっているぞ」とけん制することのように思われる。ではなぜ今か?考えられるのは、先月中国軍が44年ぶりに太平洋に向けてICBM発射実験を行ったこと。米国攻撃能力があるぞと見せつけたとの説もあり、それに反応した発表だったかもしれない。
中国のロケット軍では不祥事が相次ぎ、体制刷新をしたばかりです。中国としては新体制の能力テストと内外へのアピールだったでしょうが、米国は「内情は知っているよ」と言いたかったのかもしれません。
*1:隠密性が命の難しい艦種 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)